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 「母子疎開」という言葉をご存知だろうか。

 福島第1原子力発電所の事故によって、今も放出され続けている放射性物質。その影響を少しでも回避するため、一時的に住まいを移す母子のことを指す。多くは、放射能汚染による健康被害に不安を覚える、関東・東北地方在住の幼い乳児を抱えた母親だ。

 疎開先は、関西地方や北海道など、放射性物質の影響が比較的小さいといわれる地域。中には、欧州や米国に渡るケースもある。原発事故以降、母子疎開を受け入れる地方自治体やNPO(特定非営利活動法人)は増えており、インターネット上には、母子疎開を支援するサイトも複数立ち上がっている。

 そうした動きの一端は、日経ビジネスの2011年6月13日号の「時事深層」でも紹介した。今回は、この母子疎開の取材を通じて感じた、「情報」に対する親たちの向き合い方について書いてみたい。

放射線量を測る福島の保育園。安全性の不安から移住する家族も多い(写真:共同通信)

もはや新聞やテレビを“信じない”母親たち

 今、原発や放射性物質を巡る情報に対して、最も感度が高く、その真贋を選り分ける感覚が研ぎ澄まされているのは、間違いなく上記に挙げた母親たちなのではないかと思う。

 我が子の命を守るため、何が危険で何が安全か。彼女たちは、新聞、テレビ、雑誌、ネットの膨大な情報から、有益なものを取捨選択し、「ママ友」の情報網で共有する。

 実は、母子疎開の動きがあることを知ったのも、育児休暇中の私の妻からだった。

 マスコミ業界の一端に身を置く者として恥を忍んで告白するが、妻を含め、そういった母親の多くが情報を集める対象は、もはや新聞やテレビ、雑誌ではない。その大部分がネットである。

 放射能に詳しい大学教授、原発の元技術者、放射性物質に関して独自の調査をしている個人…。どのサイトに何が載っており、信用に足るかを含めて共有している。

 もちろん、ネット上の情報にはデマや誤情報も少なくない。それでも、母親たちは情報を集め、そこから有益な情報を選り分けようとする。ママ友のネットワークやミクシィなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使って、情報を多面的に評価し、信じるに足る情報か否かの判断を下している。

 むしろ、新聞やテレビなどマスコミ情報への依存度はどんどん減っている。たとえ、第一報を新聞が報じたとしても、それを額面通り受け取らず、その情報をどう評価すればよいのかを確認するクセがついている。

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