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『楢山節考』考

税と社会保障の一体改革と老いの覚悟

2011年7月21日(木)

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 「山と山が連なっていて、どこまでも山ばかりである。」

深沢七郎のデビュー作にして代表作の『楢山節考』

 この一文で始まる深沢七郎の小説『楢山節考』を久しぶりに読んだ。

 以前この小説を読んだのは確か中学生の頃だったと思う。実家の本棚にあった古い文庫本を引っ張り出して読んではみたものの、古い因習を題材にしていることがどうにも辛気臭く感じ、「あまりおもしろくない」と思ったことを覚えている。

 新潮文庫版で既に80刷に達している名作であるし、1983年には今村昌平の監督で映画化もされているから、多くの読者がご存知だと思うが、この作品はかつて日本各地にあったとされる「姥捨て」の伝説をテーマにしている。今回、あらためてこの小説を読もうと思ったのも、このテーマゆえだ。

自ら楢山行きを決める主人公の老女

 年老いた父や母を口減らしのために山に捨てる。想像するだけで暗い物語が浮かんでくるが、楢山節考の語り口はどこか飄々としている。陰惨な場面がないわけでない。主人公の老女おりんの隣家の主人はよその家から食料を盗んで袋叩きにされ、さらに知らぬ間に一家全員が村から消えてしまう。同じ村に住み、おりんと同じ日に楢山に行くことになった又やんは捨てられることに抵抗したため、息子から縄でぐるぐる巻きにされ、谷底に突き落とされてしまう。

 それでもこの作品が思ったほど暗さを感じさせないのは、主人公おりんのキャラクターによるところが大きい。 おりんは谷底に突き落とされた又やんのように、楢山へ捨てられることに抵抗したりはしない。それどころか、おりんの息子の辰平が母の楢山まいりを気にかけていることに気づき、「倅はやさしい奴だ!」と言うのである。

 さらに、老いても歯がぎっしり揃っていることは恥ずかしいと、自ら石に歯を打ちつける。「楢山まいりに行くときは辰平のしょう背板に乗って、歯も抜けたきれいな年寄りになって行きたかった」と。

 そして、辰平が後妻をもらい、孫のけさ吉までもが晩婚を推奨されている村の因習に反し、同じ村の女性を家に連れてきて、子を為してしまう。

 けさ吉の子がまもなく生まれようという年の瀬におりんは楢山に行く決断をする。次々に増える家族のことを考え、躊躇する辰平に有無を言わさず楢山まいりを認めさせるのだ。

 家族を思い自ら楢山に行く覚悟を決めるおりんと、まだまだ母と暮らしたいと思いながら村の因習に従わざるを得ない辰平の心の機微がこの小説の読みどころだろう。

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「『楢山節考』考」の著者

小平 和良

小平 和良(こだいら・かずよし)

日経ビジネス上海支局長

大学卒業後、通信社などでの勤務を経て2000年に日経BP社入社。自動車業界や金融業界を担当した後、2006年に日本経済新聞社消費産業部に出向。2009年に日経BP社に復帰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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