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もう「通常価格」が信じられない

セールの乱発で消費者が離れるアパレル業界

2011年7月28日(木)

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 「あまりにもセールが多すぎる。一体いつが買い時なのか」――。

 衣料品の春夏商品のセールの時期を迎えて、私は困惑していた。

 今年、私はアパレル各社の春夏物バーゲンを心待ちにしていた。理由は非常に個人的な事情からだ。今年、私は一般誌から日経ビジネス編集部に異動をして、取材先が大きくさま変わりした。大手企業の経営者に話を聞くことも増えたため、フォーマルな格好をする必要が出てきたのだ。手持ちのスーツといえば、10年以上前に就職活動で使っていたものばかり。そのため今夏のセールを機にフォーマルな洋服を一式そろえようと思っていた。

 それも今夏は、商業施設やアパレル各社が例年よりも早くセールを開始した。これを活用しない手はないと、こまめにセール情報をチェックしていたのだ。

 しかし、である。

 あまりにもセールが多く、一体いつ買えばいいのかがさっぱり分からなくなってしまった。

梅雨が明ける前から夏物バーゲン

 今夏、商業施設やアパレル各社が例年よりも早く春夏商品のバーゲンを始めた背景には、主に2つの事情がある。

 まずは例年ならば春物商品が最も売れる3月の実需期に東日本大震災が発生したこと。これがアパレルメーカーに大きな影響を与えた。3月一杯は、全国的に消費者が余計な外出を控え、贅沢品などの買い物も自粛した。震災直後の電力不足を受け、関東や東北地区では百貨店や商業施設が相次いで営業時間を短縮。そのため、アパレル各社は春物商品を売り逃がしてしまったのだ。

 4月以降、消費者の出足は少しずつ回復し、3月に春物を買い逃がした反動で4~5月の売れ行きは多少伸びた。それでも「3月の実需期に売り逃がした分をカバーできるほどではなかった」とある婦人服メーカーの担当者は振り返る。

 東北地区では店舗が被災し、営業再開に時間を要したケースも多い。いくつかのブランドでは急きょ、東北の在庫を関東以西の店舗に回して対応していたが、それでも春物の在庫は残った。

 「今年はアパレルメーカーから、セールの開始時期を早めて欲しいという要望がひっきりなしに来た」と大阪の大手百貨店役員は打ち明ける。セールの時期を早めて、早々に在庫を処分したいと望むメーカーが多かったようだ。

 もう1つは、商業施設側の事情。これには夏の電力不足が大きく影響している。

 関東で強い影響力を持つ駅上商業施設「ルミネ」。同社は今年、例年よりも2週間早く、6月16日から夏のバーゲンを開始した。

 関東・東北地区では7月1日から、電力の15%節電が本格的に始まった。節電対策として多くの商業施設が館内のエアコンを例年よりも高めに設定している。

6月16日から「ルミネ チェック・ザ・バーゲン」を開始したルミネ。6月24日からパート2、7月1日にパート3と、ブランドによって開催日は異なる

 ただでさえ込み合うバーゲン売り場で、例年よりも暑い中、試着を繰り返して商品を奪い合う。「お客様のことを考えると、到底そんな状況でバーゲンを行うことはできませんでした。混雑の分散化を図るべきだと判断し、今夏は特別にセールを前倒ししたのです」と同社の花崎淑夫会長は説明する。セール期間は6月16日から7月31日までの46日間という長さだ。昨年は7月1日~7月5日という短期間でセールを終えていたことを考えると、異例の対応と言えるだろう。

 影響力の高いルミネに続く形で、ほかのファッションビルや商業施設も相次ぎセールを早期化。「プレセール」と銘打ち、6月半ばから五月雨式にバーゲンを始めていった。

 このセール早期化が、駅ビルやファッションビル、ショッピングセンターなどの商業施設に留まらず、アウトレットモールやネット通販などあらゆる場所で発生したことから、事情はより複雑になった。

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「もう「通常価格」が信じられない」の著者

日野 なおみ

日野 なおみ(ひの・なおみ)

日経ビジネスクロスメディア編集長

月刊誌「日経トレンディ」を経て、2011年から「日経ビジネス」記者。航空・運輸業界や小売業界などを担当。2017年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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