「記者の眼」

小売が公共事業になる日

小売り企業は新しい公共の担い手になるか

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2011年8月5日(金)

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 いわゆる買い物弱者に照準を合わせた業態開発に多くの大手小売企業が力を入れている。

 もっとも多いのが小型店の開発。買い物困難地区や大型店では出店コストが合わない地域に店舗展開できるモデルを各社は探る。たとえばイオンは「まいばすけっと」、マルエツは「マルエツ プチ」と呼ばれる小型店を相次ぎ出店。家電量販店では業界首位のヤマダ電機が小型店を積極出店するという。

 一方、従来から小型店を標準のフォーマットに全国展開してきたコンビニの動きも慌ただしい。手薄だった生鮮三品の販売を手厚くしたり、過疎地に移動販売車を走らせるといった取り組みを相次ぎ始めている。

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マルエツが展開する小型スーパー「マルエツ プチ」とイオンの「まいばすけっと」(写真上:竹井俊晴、下:山本琢磨)

 急速に進む高齢化と商店街の衰退、そして小売業の飽和などが、こうした動きの背景にはある。

 イオンやイトーヨーカ堂など大手チェーンが巨大なGMSやショッピングセンターを積極的に郊外に出し始めたのは1980年代のこと。以後、さまざまな制約を受けつつも増加を続けた。そのあおりで、地域に根を張っていた個人商店は顧客を減らし、商店街の衰退を招く。

 とはいえ今ほど、こうした問題が深刻に語られることはなかったろう。若いカップルやファミリー層がマイカーを駆って大量に買い物する消費モデルが広がっていたからだ。

 高齢化が進展した今、そのモデルは一変した。毎日のちょっとした移動にも難儀する高齢消費者にとって、遠く離れたショッピングセンターまで買い物に出かけるのは難しい。かといって、いざ近場の商店街で買い物を済ませようと思っても、既に商店街は廃れ、以前の活気を失っている。代わりにコンビニはあっても、その商品構成は若者向けで、高齢者が買い物するには適さなかった。

非営利組織とコンビニ接近

 こうした光景は日本各地で見られ、高齢者を中心に全国で買い物弱者を生む要因の一つとなった。そこで大手小売りチェーン各社がこぞって小型店の研究を始めたり、過疎地で移動販売に取り組むようになったわけだ。

 「廃れてしまった商店街の変わりに、我々が買い物弱者のニーズを汲み取る。それが使命だと思う」。

 買い物弱者対策に取り組む大手小売りチェーンの関係者は言う。

 筆者はこの言葉に若干の違和感を覚えた。そもそも昔ながらの個人商店を衰退に追いやったのはあなた方ではないか、そんな思いがあったからだ。

 だが彼らを責めるのはお門違いかもしれない。消費者の需要を敏感に感じ取りながら、彼らは熾烈なチェーン同士の競争を生き抜いて業容を拡大してきた。そうした経営努力を全国各地の商店街がしてきたのかと問われれば、そうとは言い切れない。大手チェーンの出店に抗うだけ抗う一方で、自分たちでは何もできず地域経済を衰退させた、そんな事例もあるだろう。

 もとより今、求められているのは責任の押し付け合いよりも、どうやって増加を続ける買い物弱者を減らしていくのか、その方策だ。実際、地域社会や行政、NPOなど非営利団体や地元企業団体と大手小売チェーン双方が協力して店舗展開に取り組む事例も増えてきた。顕著なのはコンビニの動きだ。

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飯山 辰之介(いいやま・しんのすけ)

日経ビジネス記者。



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日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。

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