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成長を知らない子供たち

「バブルアゲイン」は笑って歌えない

2011年8月18日(木)

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 東京プリンの「バブルアゲイン」という歌をご存知だろうか。

 以前在籍していた雑誌の先輩記者が、カラオケに行くと必ず歌う十八番だった。ちょっとだけ歌詞を引用しよう。

バブルは本当によかった 後先も考えずに銀行に行けばお金すぐ貸してくれた
おいしいと思わないけどフォアグラとキャビア食べて
食後はコーヒーじゃなくてダブルのエスプレッソ
部屋はフローリングで間接照明
トイレと風呂は別々で天井は無駄に高く
悩むことなく暮らしてた10年間 バブルアゲイン バブルアゲイン

 いわゆるバブル経済の真っ只中にあった時代の狂騒を懐古して「バブルアゲイン」と歌い上げるその歌詞に、一室は爆笑の渦に包まれたものだ。

 ただその爆笑には、2種類の「憂い」が込められているように思えた。「バブル」の時代をかつて共有した者は、我がほろ苦い記憶をくすぐられるのか微妙な気恥ずかしさと、二度と戻らない「失われた時」への惜別の思いを込めて。その時代を知らぬ年若い同僚は、無限の成長を信じられた時代への羨望と、そこに乗り遅れたという諦めを込めて。

 このコメディソングに腹を抱えて笑う編集部一同は、確かにその時、「バブル世代」と「ポスト・バブル世代」に分かれていたのだ。

 ちなみに記者は後者に属する。

 かすかな「バブル」なるものの記憶を辿ると、行き着くのが小学校の社会科の授業の光景だ。人類が発生し、火や道具を使うようになったり、仏像を作ったり、政権を作ったり滅ぼされたりと、根気強く「日本の歴史」を語り続けた教師は、その終着点で誇らしげにこう言った。

 「日本は、世界一の経済大国になりました」

 歴史とは、ある終着点の事実に至るべく、誰かによって並べられた因果関係の連鎖だ。今この時代を終着点とするなら、その当時、全国の小中学校で「世界一の経済大国」と誇らしげに子供たちに教えていたということ自体、「バブル」というものの最中にいて浮かれていたこの国の軽佻浮薄さを示すエピソードになるかもしれない。しかし当時、教師が誇らしげに示した「世界一の経済大国になりました」という帰結は、少なくとも子供だった僕たちの印象の中では、敗戦以来の辛苦をすら「今この栄光のための糧になった」と思えてしまうほどに輝かしく誇らしいものだったのだ。

 時代が変われば常識も変わる。記者の世代は、戦後の焦土から立ち上がって高度成長を実現した「奇跡の復活」を教わって「僕の生まれた国は、何とすごい国なのだろう」と素直に感動した。しかし今日、中国などの新興国の勃興を見るにつけ、経済の目覚しい急成長自体は日本だけにもたらされた奇跡ではなかったということが分かった。この国は「離陸」は早めに成功したが、むしろ「着地」に失敗した、ということも、今なら分かる。おそらく今日、小学校の教壇で教師が誇らしげに「日本は世界一の経済大国になりました」と言うことはないのだろう。

 思うのは、もう小中学校で社会科の授業を受ける頃にはすっかり「失われた10年」あるいは「失われた20年」とも言われる複合不況の只中にいた「成長を知らない子供たち」のことだ。若者たちの無気力や無関心を詰る論調の報道に触れることも多い。だが、今の若者たちはこの時代を「終着点」に、どうやったら前向きな歴史を描けるのだろう。

コメント13件コメント/レビュー

正に今の日本は経済大国から環境大国への転換点に立っています。文中「成長は万薬の長」と言ってますが、環境大国こそが日本が目指す成長でしょう。(2011/08/22)

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「成長を知らない子供たち」の著者

池田 信太朗

池田 信太朗(いけだ・しんたろう)

日経ビジネスオンライン編集長

2000年に日経BP入社。2006年から『日経ビジネス』記者として、主に流通業界の取材に当たる。2012年『日経ビジネスDigital』のサービスを立ち上げて初代編集長、2012年9月から香港支局特派員、2015年1月から現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

正に今の日本は経済大国から環境大国への転換点に立っています。文中「成長は万薬の長」と言ってますが、環境大国こそが日本が目指す成長でしょう。(2011/08/22)

同じ日経新聞のサイトに「高速鉄道事故が暴く中国リスク」という記事が出ているのにこんな中国かぶれの記事を同じ会社の記者が書いているとはあきれます。(2011/08/22)

雨後の筍のごとくビルが建っていく中国の都市よりも昔からの建物がキレイに残っている欧州の都市に魅力を感じるのは私が歳をとったからでしょうか?若者がみなガムシャラな経済成長の空気を体感すべきなのかはどうなのでしょう。日本が成長期からの着陸に失敗した事を認識しているのならば成長期に未練を感じるのではなく未来のあるべき日本を模索すべきだと思います。因みに、バブルの馬鹿騒ぎと経済成長の果実の享受とは全く違うものだと思いますが。(2011/08/20)

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