「記者の眼」

「宇宙」から見る無責任ニッポン

政府に梯子を外され20年、企業は自力で世界へ

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2011年9月2日(金)

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 「このままじゃ、ロケットを開発できる人材がいなくなる」。7月末の夜、三菱重工業の技術者が、焼酎を片手につぶやいた。日本の宇宙産業をけん引してきたこの会社でさえ、直面する厳しい現実に言い知れぬ不安を抱いている。

 米国、ロシア、欧州。世界の宇宙産業は、この3勢力が圧倒的な強さを誇る。猛烈に追い上げるのが中国とインドの新興国だ。かつて宇宙先進国だったはずの日本は、宇宙産業という角度で見れば、ようやく市場参入を果たしたばかりのルーキーに過ぎない。ここまで世界との差を広げた張本人は、ほかならぬ日本政府になる。

貿易摩擦で人工衛星が犠牲に

 最初の転機は1990年。日米通商摩擦で米国から市場開放を迫られた日本政府が差し出したのは、人工衛星だった。政府や企業が衛星を調達する際、研究開発用など一部を除き、国際入札が義務付けられた。海外から技術を取り込み、工夫して進化させ、ようやく世界へと打って出ようとした矢先の出来事に、国内の衛星メーカーは大きな打撃をこうむる。

 信用第一の宇宙産業では、何よりも運用実績がものを言う。実績が豊富で信頼性の高い海外製品に新参者の日本製品は太刀打ちできず、日本政府や企業が発注する人工衛星は海外製となる。実践の場を奪われた日本メーカーは、ここから10年にわたり世界から忘れられた存在になった。

 2008年、当時の自民党政権は宇宙基本法を制定した。商用市場への参入を阻まれ、研究開発に進まざるを得なかった日本の宇宙産業を、もう一度国として後押しする狙いだった。この法律は宇宙に関わる多くの企業から、喝采をもって迎えられた。

 翌年、決定された宇宙基本計画は、この法律の趣旨を具体化するものだ。衛星の打ち上げ基数を2倍に増やし、日本版GPS(位置情報システム)を整備。ミサイル探知など防衛分野への応用や、ロボットによる月の資源探査まで盛り込まれた。計画達成には総額2兆5000億円が必要と試算され、宇宙関連予算は6000億円への倍増が示唆された。この追い風を受け止めるべく三菱電機やNECは宇宙関連の売上高を大幅増とする事業計画を策定した。

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著者プロフィール

阿部 貴浩(あべ・たかひろ)

日経ビジネス記者。日本経済新聞で中堅・ベンチャー企業部や証券部、名古屋編集部などを転々とし、2011年春から日経ビジネス編集部の片隅に席を見つける。製造業とのかかわりが長く、自動車や機械、造船など「物づくり企業」を幅広く担当。メーカーのおじ様方と飲みに繰り出しては経済実態とかけ離れた円高に憤り、震災復旧の苦労話に涙ぐむ。いつの間にやら会社近くの「六本木・麻布」より「神田・新橋」を好むようになった。



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日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。

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