• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

この牢獄の看守はあなた

ネットに生まれた「まなざしの権力」

2011年10月7日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 『日経ビジネス』9月17日号の「時事深層」に「企業に広がる『SNS疲れ』」と題した記事を書いた。facebookやmixi、ツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を企業が活用する上での「炎上」リスクと、そのリスクを危惧する企業が抱える「疲労感」を書いたものだ。

 これを書きながら、学生時代に読んだ1冊の本を思い起こした。ミッシェル・フーコーの『監獄の誕生―監視と処罰』(1975年)。コレージュ・ド・フランスの教授だったフーコーは、この本の中で、中世以降の監獄と処罰の「近代化」の歴史を紐解きながら、そこに生まれた権力作用を巧みに浮かび上がらせていく。

 この本で象徴的に紹介されているのが、英国の哲学者・経済学者ジェレミー・ベンサム(1748年-1832年)が創案したとされる「パノプティコン(一望監視装置)」だ。

 中心部に監視塔があり、その監視塔を取り囲むように放射状に独房が配置されている。監視塔を光源として独房向かって光が当てられる仕組みになっており、監視塔から独房を監視することはできるが、逆に独房から監視塔の様子は見えない。監視塔に看守はいるかどうか、看守がどの独房を監視しているかは、収監者からは分からない。分からないが、常に「見られている」と意識して生活せざるを得ない。

 一般社会では、AとBはお互いに「見る」し「見られる」関係にある。しかしパノプティコンは、そうした対等な「見る/見られる」の関係性を切り離し、一方通行にする。「見られるが見ることはできない」囚人は、「見ることはできるが見られることはない」看守から強い権力作用を受ける。しかも、看守が本当に見ていようが見ていなかろうがその作用は自動的に継続する(見られている可能性を囚人は意識し続けるから)。

 功利主義哲学者であるベンサムは、「肉体」に対する抑圧や処罰によって支配する中世以来の「非人道的」な監獄に異を唱え、「精神」を支配するための効率と効果を最大限に高めたこの装置を創案した。だが、フーコーの著書を読み進めると、肉を割き骨を削る中世の監獄と、心を縛る近代の監獄、果たしてどちらが「人道的」なのかにわかには分からなくなる。

コメント0

「記者の眼」のバックナンバー

一覧

「この牢獄の看守はあなた」の著者

池田 信太朗

池田 信太朗(いけだ・しんたろう)

日経ビジネスオンライン編集長

2000年に日経BP入社。2006年から『日経ビジネス』記者として、主に流通業界の取材に当たる。2012年『日経ビジネスDigital』のサービスを立ち上げて初代編集長、2012年9月から香港支局特派員、2015年1月から現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

全体の2~3割の人でも理解し、動き出してくれれば、会社は急速に変わります。

中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長