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「売上金を180日間も引き出せないの?」

創業時に起きた突然の口座凍結事件

2011年10月21日(金)

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 「あんたたちのビジネス、詐欺まがいでしょ。ですから口座を凍結します。お客さんからの送金は引き続き受け入れておくけれど、そのお金を引き出すのは調査が終わってから」

 米国でビジネスを始めてしばらく経ったころ、利用していたオンライン決済サービス会社から手紙が届いた。原文は英語だが、読んだ私が受けた印象を加えて翻訳すると冒頭のような内容であった。

 びっくりした。全く思い当たる点がなかったからだ。次に少々青ざめた。お客様からの送金の大半をその決済会社に預けていたので、金が引き出せないとなると次のビジネスができなくなる。資本金なしでビジネスを始めてしまったため、自転車をこぎ続けないとたちどころに倒れてしまう。

暇つぶしのための会社がいつの間にか

 資本金ゼロで会社をスタートさせた話と聞くと、会社法の最低資本金制度のことかと思われるかもしれない。本連載でお伝えするのは、資本金ゼロで立ち上げた会社を成長・運営していくことがいかに大変かというオンゴーイングの実体験である。

 ここ米国ネバダ州でも会社設立にあたっての最低資本金に制限はない。CFO兼マネージングパートナーをしているこの会社(TransAction Holdings, LLC)を私は資本金ゼロで設立した。2006年のことであった。

 正直に書くと会社設立に特段の目的はなく、結婚を理由に渡米し、ラスベガスに住むようになった私が暇つぶし程度に何かできないかと思って作った、いわば趣味の会社であった。CEOは米国人の夫である。

 会社を作る以上、ビジネスアイデアらしきものはあった。日本で販売されているようなオシャレでユニークな小物を中国で製造し、それらを米国に輸入して販売しようと考えていた。2006年に会社を設立した直後は、アリババドットコムというサイトをチェックして、いい製造委託先がないか物色する日々を送っていた。

 すると会社設立の際にパートナーとしておいた夫が「薄型テレビのアクセサリーをOEM製造・販売しよう」と言い始めた。当時、夫は薄型テレビの製造・販売事業を営んでおり、関連商品を別会社、つまり私と設立した会社で製造販売したいと考えたのだ。

 そうなると商品を製造する資金が必要になる。アクセサリーといっても1つや2つではなく、テレビを壁掛けにするマウント器具から、オーディオやビデオ関連のケーブルまで何種類もある。ケーブルといっても長短いろいろだ。しかも商品1種類につき、マウントなら100個単位、ケーブルとなると数100本単位で中国へ注文しなければならない。

 ビジネスを始めるためにどの程度のアクセサリーを用意しなければならないのか、計算してみると約6万ドルの資金が要ることが分かった。夫にそれを伝えると唸るばかりであった。

 身内のことを書くのはどうかと思うが、夫はセールスやPRについてはそれなりの力がある。しかしカネ勘定には疑問符が付く。お金の有無を考えずに大量の仕入れを行ってCFOの私をパニックに陥れるというダメCEOぶりが日頃、目について仕方がない。

 「6万ドルなければ始められない」と夫に念を押すと、製品を卸売りする予定であった会社に赴き、頭金として3万ドルを受け取ってきた。残り3万ドルをどうやって集めるかが次の問題になった。

 「あなたが言いだしっぺなんだから時計を売りなさい」。こう言って、夫が大事にしていたロレックス2本を売りに出し、約1万5000ドルを確保した。3万ドルの半分を捻り出し、好調な滑り出しだと思ったが家の中に売れそうなものはもはやない。

返品されたテレビを格安で再販

 「あの倉庫にあるテレビ、売ったらどうかしら」。返品された薄型テレビの中から、小型サイズのものを再販し、それで資金を貯めることを思いついた。

 米国で商品の返品は頻繁に行われる。壊れているというまともな理由もあるが、「思っていたのと違った」、「気が変わった」など日本人には理解できない返品理由もある。しかも、ちょっと使っていたり、汚した後でも平気で返品してしまう。

 恐るべき“返品文化”については4年ほど前に記事を書いたことがある。追って本欄に再掲しようと思っている。

 新品同様であったり、欠けているパーツを修理したりした薄型テレビが夫の会社の倉庫に山ほど眠っていた。それらを格安で仕入れ、格安で販売し、その売上金を薄型テレビのアクセサリー製造費用に当てようというわけである。

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「「売上金を180日間も引き出せないの?」」の著者

上田 尊江

上田 尊江(うえだ・たかえ)

Artform LLC CFO

マネジメントコンサルタント、オンライン証券会社の創業、海外企業の日本参入支援など手がけた後、2006年より渡米、TransAction HoldingsおよびartformのCFO。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官