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何でもありの返品制度が築くゴミの山

【参照記事】『経営とIT新潮流』から再掲

2011年11月8日(火)

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 本稿は2007年7月5日に公開した記事の再掲である。日経BP社が当時開設していた『経営とIT新潮流』というWebサイトに寄稿した『不思議の国アメリカ』という連載の第2回記事であった。再掲にあたって「アメリカ」という表記を「米国」にした。

 もう何年も前のことだが、後に主人となる米国人から初めてプレゼントを手渡された。その場で包装を解き、プレゼントを確認した私は感激した。中身を取り出した後の紙袋の中に小さな封筒が残っていたので、私は主人からの手紙だと思い、更なる感激と共に封筒を開けた。

 ところが!

 中から出てきたのはレシートだった。

 まだ米国へ移住する前の出来事であったが、私は随分驚いた。誰かにプレゼントをする際、大抵の日本人はその物の価格を贈る相手に伝わらないようにする。それが日本のマナーであり、店頭でもわざわざ値札を取るサービスが施される。プレゼントの袋から出てきたレシートを繁々と見つめていると、主人からさらに私を驚かせる言葉が発せられた。

 「気に入らなかったら、返品すればいいよ」。

 もらった物を気に入らない場合、日本人であればどうするか。受け取ってくれる他の人にあげてしまうことが多いと思う。リサイクルショップに転売したり、最近ではネットオークションに出品することもあるだろう。

 だが、その贈り物が買われた店に返しに行き、返金してもらうという話はほとんど聞かない。返品に対する心理的な壁は高いし、小売店側の返品受付条件も厳しいからだ。そもそも贈り物にレシートが付いていることは少ないから、返品はまず不可能である。

 これに対し、米国では、贈り物にレシートを付けることが当たり前だ。クリスマスの後には、贈り物の返品ラッシュが起き、どこの店にも長い行列ができる。贈り物であろうと、自分用に買ったものであろうと、米国における返品は非常に広範かつ頻繁に行われる。

 「いつでも(店によっては購買後90日などの期間設定はあるが)」、「どんな理由でも」、「どの商品でも」、返品できる。この認識は消費者の中に浸透している。米国に移住した後、返品制度が日本人には到底考えられないレベルで実施されている現状に私は驚愕することになる。

1年使った後でもかまわない

 まず驚くのが返品の理由である。例えば、代表的なチェーンストア、ウォルマートへ行くと、カスタマーサービスカウンターに長い列ができている。大半が返品のリクエストだ。ある時、何をどのような理由で返そうとしているのだろう、と気になり、興味本位で聞き耳をたててみた。「もう要らなくなった」「気が変わった」「お金がなくなったから返す(だから商品代金を返して欲しい)」という理解に苦しむものばかりであった。

 日本にも返品制度はあるが、米国人のような理由で返品しようとする人はまだ少数派だろう。返品の理由は、間違ったサイズを選んでしまったので他のサイズに変えたいとか、商品に欠陥があったなど、妥当な理由がほとんどである。そして、購入して間もない、新品同様の商品のみが返品の対象である。

 そんなことは当然と思われるかもしれないが、米国では違う。こちらに来て、驚かされるのは、返品理由もさることながら、返品される物の状態だ。明らかに何度か使った物であっても、顧客は平気で返品してくる。店側は文句も言わず、さっさと返品処理をする。先に書いたように、この国では「何でも」返品できてしまう。

 消費者にとってこれほど都合のいい制度はない。とりあえず購入して、気に入らなければすぐ返す。購買直後でなくとも、使用してみて使用頻度が下がってきたら、買った時のレシートを探し出して返品すればいい。次のようなひどいケースもある。

コメント2件コメント/レビュー

合理的で他人に甘えかかる事が少ない米国人が、いつの間にか変質して行った結果と思います。私は、その返品連鎖の中の最下層、つまり製造会社(電気製品)の品質管理部門(返品を受付け、修理する部署も統括)を経験しました。まぁ、その様な変な無償返品が来るのは米国のみで、他の輸出先からはそれなりに返品理由が理解できるものでした。尤も、数は少ないですが、米国からも有償修理返品が来ることも有り、キチンと自己責任で処理する真っ当な米国人も極僅かはいる事を付け足しておきます。(昔の米国ではそれが普通でした) それで、会社の中で最も被害を受けたと思われるのが営業部門です。何故って、米国向けの売上は、最初から約20%減に割り引いてカウントされ、運が悪い場合は〆てみると売上半減なんかも出て来るから全く業績予測がつかず、更に賞与額にも影響してしまう場合もあるからです。(2011/11/08)

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「何でもありの返品制度が築くゴミの山」の著者

上田 尊江

上田 尊江(うえだ・たかえ)

Artform LLC CFO

マネジメントコンサルタント、オンライン証券会社の創業、海外企業の日本参入支援など手がけた後、2006年より渡米、TransAction HoldingsおよびartformのCFO。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

合理的で他人に甘えかかる事が少ない米国人が、いつの間にか変質して行った結果と思います。私は、その返品連鎖の中の最下層、つまり製造会社(電気製品)の品質管理部門(返品を受付け、修理する部署も統括)を経験しました。まぁ、その様な変な無償返品が来るのは米国のみで、他の輸出先からはそれなりに返品理由が理解できるものでした。尤も、数は少ないですが、米国からも有償修理返品が来ることも有り、キチンと自己責任で処理する真っ当な米国人も極僅かはいる事を付け足しておきます。(昔の米国ではそれが普通でした) それで、会社の中で最も被害を受けたと思われるのが営業部門です。何故って、米国向けの売上は、最初から約20%減に割り引いてカウントされ、運が悪い場合は〆てみると売上半減なんかも出て来るから全く業績予測がつかず、更に賞与額にも影響してしまう場合もあるからです。(2011/11/08)

米国在住10年です。確かに日本から来ると驚きますね。ただ若干内容に不十分、あるいはフェアでない箇所が見受けられます。例えば贈り物のレシートは、「ギフトレシート」と言って、金額が記載されていない「購入証明書」のようなものです。まあ、返金や交換をしてもらえば結局金額が分る訳ですが、「日本人はその物の価格を贈る相手に伝わらないようにする。それが日本のマナー」について比較言及したいならこれは説明が不十分です。また米国は日本よりもギフトが盛んで、その人にとって不要なものを押し付けられるのは贈った方も贈られた方も不幸だという考え方があり、ウェディング・ギフト・レジストリーのような、結果として不幸なゴミが発生しない素晴らしい習慣もあります。筆者が返品を処理しなければならない方の立場で、大変な目に遭われている事は理解しますが、「米国の消費者は総じてアカウンタビリティが低い」的な論調は、米国人の価値観、道徳観を一面からしか捉えておらず、あまり読んでいて気持ちのよいものではありません。「水着の返品率60%」の数字をどこから引かれたか分りませんが、私の知る限り肌に直接身に付けるものは返品はできなかったと思います。(2011/11/08)

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