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篠山紀信が切り取った「被災地」

タブーを捨てて本質を見よう

2011年11月18日(金)

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 篠山紀信氏は現在、日本で最も有名な写真家の1人だろう。ジョン・レノンとオノヨーコ、宮沢りえ、ダライ・ラマ14世、AKB48など、常に時代の先端を行く人物を撮り続けてきた。数々の衝撃的な作品は、社会に大きな波紋を呼び、今も多くの評価と批判を集めている。

 その篠山氏が70歳にして、新境地を開く写真集『ATOKATA』を出版する。題材は東日本大震災の「被災地」だ。

 そう聞くと、被災者の絶望から復興への祈りといったテーマの写真集を想像するかもしれない。だが、この写真集のテーマは自然に対する「畏怖と畏敬」。静かな「無常感」が漂う被災地の光景を切り取った写真は、数ある被災地の写真の中でも異彩を放っている。

(聞き手は広岡 延隆)

――現地に行った時、どのように感じたでしょうか。

 ただ呆然としました。

被災地で「自然に対する畏怖と畏敬の念を感じた」という篠山紀信氏(写真は陶山 勉、以下同)

 3月11日午後2時46分に東日本大震災が起きて、本当に大量の映像や写真が押し寄せてきました。私も自分が写真家として何かしなきゃいけないという気持ちがあったんですが、悶々としていました。行かなきゃいけないと思いながらうじうじしていたんですよ。

 そうしたところに、「日経コンストラクション」でやっている「現場紀信」というコーナーで、被災地に行かないかというお話を編集長から頂きました。それで背中をドーンと押してもらったんです。

 結局、現場に入ったのは5月1日ですから、50日経っていましたね。その頃になると、報道写真から子供を抱えている親などの感情移入を促すような人物写真まで、たくさんの写真が世の中に溢れていました。同じ物を撮ってもしかたありません。じゃあどう撮るか。実は決めるのをやめようと思ったんです。予断を持たず、現場でありのままを撮ろうと。

 現場にいくと、それまで日常的な田舎の景色が、峠を超えた瞬間にバッと一面瓦礫の山に変わる。船が陸にあり、クルマが木にぶら下がっている。重力が失われたかのような非日常の光景です。でもその不思議な光景の中で、それでいて足元を見ると泥まみれの家族の写真がある。幸せが瞬間的に奪われたことにも目が行きますし…。

 とにかく、初めてのことばかりで、何を撮っていいか分からなかった。写真家の中には、あまりの自然の猛威におじけづいて、何も撮れずに帰ってしまった人もいたというぐらいですから。

自然への畏怖と畏敬

 ですが、仙台市若林区に行った時にテーマが見えてきたんです。津波の被害で木が横たわっていたのですが、北欧の林のような景色がありました。そこだけ見たら、すごく静かな景色なんです。

 でも、木の肌が津波の被害を受けて色が変わったり剥けていたりしているし、ゴミもある。あり得ないようなねじれ方をした木もあったし…。もの凄いパワーによって、一瞬の内にこういうことが起こっちゃったわけです。自然の力が、前からあった自然を破壊して新しい自然を創造したんじゃないか、ということが見えてきました。

「北欧の林のような光景もあった」と語る

 そこには本当に静かに漂っている水がありました。この静かな水がすべてを破壊したと考えると、恐ろしいという畏怖と、スゴイという畏敬の念が湧いてきた。現代美術の作家でも作れないようなものが、自然によってたくさん作られたともいえる。それに思い至ってから、僕は取りつかれたように撮り続けました。

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「篠山紀信が切り取った「被災地」」の著者

広岡 延隆

広岡 延隆(ひろおか・のぶたか)

日経ビジネス記者

日経コンピュータ編集部、日本経済新聞産業部出向を経て2010年4月から日経ビジネス編集部。現在は自動車など製造業を担当している。これまでIT、電機、音楽・ゲーム、自動車、製薬産業などを取材してきた。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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