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“顧客監禁管理”システムの最高峰はカジノにあり

【参照記事】『経営とIT新潮流』から再掲

2011年11月25日(金)

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 本稿は2007年9月11日に公開した記事の再掲である。日経BP社が当時開設していた『経営とIT新潮流』というWebサイトに寄稿した『不思議の国アメリカ』という連載の第4回記事であった。再掲にあたって「アメリカ」という表記を「米国」にした。

 私は米国人の主人とラスベガスに住んでいる。実際に暮らしてみて、ラスベガスには世界で最も進んだものが二つあると知った。

 一つは言うまでもないがカジノビジネスだ。興味深いことに、ラスベガスのカジノは地域に密着した存在であり、観光客で賑わうストリップ通り近隣以外にも大規模施設が点在し、いずれも地元の住民が頻繁に訪れる場所になっている。

 住民がカジノを訪れる目的は当然ギャンブルなのだが、そればかりではない。カジノには、レストラン、ファーストフード店、バー、映画館、ボーリング場、スケートリンク、美容室、スパ、プールなど、あらゆる娯楽施設が備わっており、地元民が家族揃って食事をとり、憩う場所でもある。

 ラスベガスに住んでいながら、私はギャンブルに全く興味がない。にも関わらず、一家団欒のため、主人や主人の両親と一緒にしばしばカジノに行っている。

 カジノはいつも盛況で非常に多くの人々がギャンブルに熱中している。日本にいたとき、競馬場やパチンコ屋に一度も入ったことがない私としては、なぜあれだけ沢山の人がスロットマシンやブラックジャックのテーブルにかじりついているのか、理解に苦しむ。

 ほとんどのゲームがオールドファッションで面白くないし、負ける確率が圧倒的に高いことが分かりきっているので、自分のお金をあえて賭ける気がしないのだ。

 経験がないから分からないものの、自分の金を賭けるという行為自体がエキサイティングなことで、しかも何度か大勝ちした経験があると、その時の感動が忘れられず、「きっとまた勝てる」と自己暗示にかかり、毎日のようにカジノに足を運んでしまうのかもしれない。

 しかし、ラスベガスに住んでみて初めて分かったのだが、カジノはギャンブルという単純要素だけで人を引き付けているわけではない。実は、非常に巧妙に仕組まれたIT(情報技術)によるデータマイニングと絶妙なマーケティングが見事に機能することで、多くのカジノ顧客の「リテンション率」を大きく引き上げているのである。

 リテンション(Retention)は、保持する、保つといった意味で、顧客を引き付けて再訪させるための施策をCRM(カスタマー・リテンション・マーケティング)と呼ぶ。リテンションには監禁という意味もあるためか、CRMをカスタマー・リレーションシップ・マネジメント(顧客関係管理)と品良く呼ぶことが多い。

 もっとも私の見る限り、ラスベガスのカジノがやっていることは、実に卓越した“顧客監禁管理”である。

 これまで米国のお粗末なIT利用例や仕組みを取り上げてしまったが、今回は正反対のベストプラクティスを紹介する。米国に住むものとして、世界で最も進んだCRM事例について記述できることを嬉しく思っている。

 冒頭で述べた「ラスベガスにある世界で最も進んだもの二つ」とはカジノとCRMなのである。

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 ここでリテンション率の高い典型的なカジノ顧客を紹介しよう。主人の両親である。15年以上ラスベガスに住んでいる両親はたいそうなカジノファンで、中でもスロットマシンとビデオポーカーをこよなく愛している。

 カジノファンと書くと日本の読者に誤解されるかもしれないが、日本で言えば、ショッピングモールや温泉施設あるいはスポーツジムに通う夫婦、といった趣である。ただし、主人の両親、とりわけ母が毎日のようにカジノへ足を運ぶ理由は、カジノが展開している「ロイヤリティプログラム」の効果もあると私はにらんでいる。

 “プレーヤーズクラブ”や“クラブ・エリート”など名称はまちまちだが、すべてのカジノはロイヤリティプログラムという会員制の特典サービスを持ち、その内容を競っている。プログラムに参加するのは簡単で、ギャンブルをする際、名前や住所を登録すれば、その場で磁気テープの付いた会員カードを貰える。

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「“顧客監禁管理”システムの最高峰はカジノにあり」の著者

上田 尊江

上田 尊江(うえだ・たかえ)

Artform LLC CFO

マネジメントコンサルタント、オンライン証券会社の創業、海外企業の日本参入支援など手がけた後、2006年より渡米、TransAction HoldingsおよびartformのCFO。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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