「橘川幸夫の オレに言わせれば!」

親子一緒に入学? 「こども芸術大学」の画期的幼児教育

子どもが好きになることこそ究極の少子化対策

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2011年12月2日(金)

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 京都は古くからの伝統文化の町であると同時に、未来を切り開く人材を育てる教育の町でもある。左京区白川の山側の斜面に、まるで山賊の山城のように京都造形芸術大学がそびえているが、その頂上近くに「こども芸術大学」がある。京都造形芸術大学が作った、小学校に行く前の児童が通う混合保育園だ。

 最初に名前を聞いた時に、てっきり、子どもに芸術を教育する学校だろうと早合点したのだが、行ってみて驚いた。確かに、お絵かきやパフォーマンスもやっているが、この学校の注目すべき点は、そのようなことではない。入学資格が「親と子どものセット」となっているのである。授業は、先生と親(母親が大半だが父親もいる)と子どもで授業をやっている。父兄参観日ではなく、日常的に、この組み合わせで授業が行われているのだ。

自分の子ども以外の子どもも、好きになる

 例えば、親たちの膝を椅子に見立てた、椅子取りゲームをやる。先生の合図で、親の周りを歩いていた子どもたちが、近くの親の膝を目がけて自分の椅子を確保するために走りだす。親からすると知らない子どもが自分の膝にしがみつく。子どもたちからすると、知らない大人の膝の暖かさを感じる。

 普段、子どもたちが多くの大人たちと生活しているから、何のてらいもなく他人の親の膝に飛び込むことが出来るのだろう。このようなメソッドを重ねていくことにより、子どもたちは、自分の親以外の大人たちの愛情を感じるようになり、親たちは自分の子ども以外の子どもたちを抱きしめる喜びを感じるようになる。それまで、自分の子ども以外が、悪いことをしても見てみないふりをしていたものが、自分の子どもと同じように「そんなことしては駄目だよ」と諭すようになる。

 校長の田中洋一さんの話によると「最近は、自分の子どもは好きだけど、子どもそのものは嫌いな人が見受けられる。だけど、ここにいると、子どもそのものが好きになるんです。子どもも、今の社会では、自分の親以外の大人と出会う機会が少ない。子どもにとって、はじめて社会そのものに触れることになるんだと思います」。地域社会の崩壊、家族内部の崩壊などの現象の中で、こども芸術大学の取り組みは画期的である。

 以前、東京の公立中学校に素晴らしい校長先生がいて、総合学習で「大人」というテーマの授業をやっていた。女性の校長先生だったが、その先生も「今の子どもは、自分の親以外に大人と付き合う機会がなくて、地域の付き合いもないし、買物に行っても機械的なもので、店の人との付き合いにならない。だから、いろんな大人を集めて、大人に質問する授業をやりたい」とのことだった。僕も「大人」として授業に参加し、子どもたちから、いろんな質問を受けて答えた。ギャラはないが、中学校の給食を久しぶりに食べさせてもらった。

 社会のセキュリティ重視のため「知らない大人と話してはいけませんよ」と子どもに強く言ったために、失われた大事なものがあるはずなのだ。子どもと大人のちゃんとした交流は、社会に本当の信頼感を生み出すために、とても必要なことだと思う。

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著者プロフィール

橘川 幸夫(きつかわ・ゆきお)

デジタルメディア研究所代表。72年、音楽雑誌「ロッキングオン」創刊。78年、全面投稿雑誌「ポンプ」を創刊。その後も、さまざまな参加型メディア開発を行う。83年、定性調査を定量的に処理する「気分調査法」を開発。80年代後半より草の根BBSを主催、ニフティの「FMEDIA」のシスオペを勤める。主な著書に『一応族の反乱』、『生意気の構造』(ともに日本経済新聞社)、『21世紀企画書』(晶文社)、『インターネットは儲からない!』(日経BP社)、『暇つぶしの時代』(平凡社)『やきそばパンの逆襲』(河出書房新社)、『風のアジテーション』(角川書店)、『ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。』『希望の仕事術』(ともにバジリコ)、iPhone、iPadアプリ『深呼吸する言葉の森』(オンブック) ほか共著、編著、講演多数。Twitter「metakit



このコラムについて

橘川幸夫の オレに言わせれば!

地方の小さなビジネスから日本の官僚システムまで、あらゆるテーマについて自らの足を使って拾った、“誰も知らない話”を毎回展開する。ゆっくりと崩壊していくかに見える日本と、先が見えない閉塞感から、内に閉じこもりがちな企業やビジネスマンに檄を飛ばす。

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