「『1皿90円戦略』の痛みは大きかった」
10月。2012年2月期第二四半期決算会見の席上、カッパ・クリエイトの平林徹社長はそう言って、過去の値下げ戦略の敗北を認めた。
デフレの波が止まらない。特に飲食店業界では、低価格戦争の流れが顕著だ。牛丼業界各社は1皿250円のキャンペーンを打ち、終わりのない価格争いが続いている。11月中旬には、すかいらーくの運営するファミリーレストラン「ガスト」が「サンクスフェア」と題して通常366円~523円のキッズプレートを39円で提供開始し、話題を呼んだ。
回転寿司業界も例外ではなかった。リーマンショック以降、顧客獲得の呼び水として各社は相次ぎ「1皿90円」の禁じ手を打った。カッパ・クリエイトの運営する「かっぱ寿司」も2008年以降、日々激化する競争に負けじと「平日終日90円」の展開を全国規模で広げていく。
しかし、この安売り競争がもたらしたのは利益ではなく、「価格だけでは勝てない」との苦い教訓だった。「特に、2011年に入ってからの値下げ効果は限定的。1皿90円をアピールするための広告費増加も経営に響いた」と、平林社長は過去の戦略を振り返る。
一方、一度は低価格路線に踏み出したライバルはどう動いたのか。
2009年2月、スシローは期間限定の「一皿90円」セールや割引クーポンの導入を始める。背景には、スシローから足が遠のいていた客を再び取り戻すと同時に、新規顧客を獲得するという目的があった。
利益を犠牲にして、売り上げを取る。結果、店舗によっては売り上げが対前年でおよそ2倍~3倍に増え、単月の売上高が業界トップになる月も出てくるなど一定の効果が見られた。
しかし、スシローは気づくことになる。「このままでは先がない」と。
確かに、売り上げは大幅に伸びた。だが、対前年で利益は減少。安売りをするほど、企業の体力が奪われる。そう気づいたスシローは8カ月後の10月から、「ブランド元年」と題して価格軸から価値軸へと180度異なる戦略を取り始める。割引を一切やめ、「100円でもおいしい」ことを前面に打ち出したメディア戦略を講じた。結果、顧客間の口コミ力も増し、2011年、それまで業界首位を独走していたかっぱ寿司を抜き売上高首位に躍り出た。
こうした流れから「逃げ遅れた」のが、かっぱ寿司だった。他社が安売りから手を引いたあとも、1皿90円戦略を続行。安売りに終止符を打ったのは2011年に入ってからのことだった。
今、回転寿司業界では「価格勝負から品質勝負へ」と戦略を転換する動きが見られる。かっぱ寿司も寿司ネタの見直しなど品質アップに主軸を置いた取り組みを始め、首位の座を奪ったスシローの背中を追う。安くなければ他社に勝てない。その思い込みが招いたツケは大きい。


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