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トヨタ社長に笑って苦言を呈する中国流挨拶

なぜ中国政府はいつでも「上から目線」なのだろうか

  • 坂田 亮太郎(北京支局長)

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2011年12月22日(木)

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 今年(2011年)10月22日、私は江蘇省常熟市でトヨタ自動車主催の式典を取材していた。同社は常熟市の東南経済開発区に独資の研究開発拠点を設立するため、この日定礎式を実施した。式典には豊田章男社長や研究開発トップの内山田竹志副社長も出席、来賓には中央政府や江蘇省の幹部などが顔を揃えた。

 主催者として挨拶した豊田社長は、ハイブリッド車(HV)や家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)に使用する部品などを中国で開発していく計画を発表。そのための戦略拠点となるのが今回の「トヨタ自動車研究開発センター(中国)」だ。

定礎式には最新のプラグインハイブリッド車も展示された

 豊田社長の話が終わると、来賓による挨拶が続いた。この手の挨拶は大抵つまらないが、記者としては聞き流してばかりもいられない。壇上に上る人はそれなりのポジションの人であり、何かニュースのネタを提供してくれるかもしれないからだ。

 5人目か6人目かに登壇したのは国家発展改革委員会で産業協調局の副局長を務める陳建国氏だった。抑揚の少ないしゃべり方のため睡魔はピークに達したが、会場が急に沸いたので慌てて耳をそばだてた。

 「今日何を言おうかと考えていた時、様々な助言をもらった。『トヨタを褒めるべきだ。中国の自動車産業に大きく貢献してくれているのだから』という声がある一方で、『トヨタを批判すべきだ。一汽トヨタと広州トヨタが今、直面している難局については、トヨタは直接の責任を負っているのだから』という意見もあった」

 中国の自動車販売は2011年に入って成長が大幅に鈍化している。対前年比で2009年は45%増、2010年も32%増と大きく伸びた反動から、2011年は5%程度の成長に落ち着くとの見方がもっぱらだ。排気量1.6リットル以下の小型車向け減税措置が2010年末に打ち切られたことが大きな要因だから、市場の伸び悩みの責任は政府の側にもある。

 トヨタの場合、販売が伸び悩んでいるのは今年だけの話しではない。2009年も2010年も、共に市場の伸びには遠く及ばず、シェアを落とした。2011年は11月までの累計販売台数が前年同期比6.7%増と市場平均を上回っているものの、日産自動車の同21.4%増と比べると見劣りする。陳副局長は、こうした状況をチクリと言及したのだ。

 「よく考えたら、励ますような話をすべきだと思う。指導者が励ますような話をする時、以下の3点が常に肝要だ。最初は『大変だね』とねぎらい、次は『よく頑張った』と認め、最後は『希望を持って、きっと大丈夫だ』と励ますのである。トヨタの中国での研究開発事業についてもこのパターンでいける」

 上記はICレコーダーに録音していた陳副局長の発言を起こしたものだ。文字面だけ見ると「何が面白いの?」と思われるかもしれない。しかし、この冒頭の発言で会場は笑いに包まれた。

豊田社長の面前で「恥だ」と言ってもピリピリせず

陳副局長の挨拶に会場は沸いた。同時通訳を聞いていた豊田章男社長も思わず笑顔に(右から2人目)

 実は、トヨタの研究開発拠点をめぐっては紆余曲折があった。トヨタは中国では、一汽汽車(吉林省長春市)と広州汽車(広東省広州市)の2つの国有自動車メーカーとそれぞれ合弁会社を設立することで事業展開している。それぞれの合弁会社には既に研究開発組織を設けているが、トヨタは100%独資の研究開発拠点の設置にこだわってきた。

 トヨタからすれば、独資の研究開発拠点だからこそ、知的財産権の漏洩に心配することなく、虎の子の技術を中国に投入できると考えたのだろう。しかし、中国側の受け止め方は違った。双方の合弁パートナーは人気車種を自分たちの合弁会社に投入して欲しいと願っているが、どうしても2分されてしまう。結婚相手が2人いるようなもので、それだけにパートナーであるトヨタに対し疑心暗鬼になりやすい。

 こうしたパートナーの気持ちを配慮したのか、トヨタは北の吉林省と南の広東省のちょうど中間地点に位置する江蘇省に研究開発拠点を開設することに決めたのだった。それでもいろいろと葛藤があったようだ。陳副局長の発言の中には、そうした経緯の一端が垣間見えた。

 「このような決定(外資系企業が独資の研究開発拠点を置くこと)を下すには勇気が欠かせない。一汽トヨタと広州トヨタの信頼を得るのも容易ではなかっただろう。特に長春市の政府と中央(政府)の関連する部門の支持を得るのも容易でなかったはずだ」

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