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格付け依存で緩んだ証券化市場の規律

欧州危機への導火線 (1)

2012年1月17日(火)

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 13日、米大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がユーロ圏9カ国の国債格付けを引き下げた。フランスが「トリプルA」の座からすべり落ちたことが欧州危機の深刻さをより印象付けた。いま再び「格付け」への関心が高まっている。

 世界経済の行方を左右する格付けとは何なのか。これまで本コラムで紹介してきたその役割を、今回も歴史を紐解きながら整理しよう。

格付け会社の短い春

 格付け会社が我が世の春を謳歌した時期は、短かったが確かにあった。儲からない企業格付けビジネスに汲々としていた時代、その困難を乗り越えるために投資家だけではなく発行体からも手数料を徴収するという利益相反の“毒薬”を飲んで以降、確かに格付けビジネスの収益性は改善の方向に向かった。

 だが、これだけでは春を迎えるのにはまだ遠い。格付け会社の成長は、ちょうどその頃に起こった“三つの追い風”により確たるものとなった。(1)各国政府や国際機関による格付けの利用、(2)エンロンやワールドコム等の事件による投資家の格付け依存、そして(3)証券化ビジネスの隆盛である。

 政府や国際機関が格付けを規制に利用するという動きは、別に新しいものではない。もともとは、1930年に米国で金融機関の資産の質を評価するのに用いられたのが始まりである。日本にもかつては適債基準といったものがあった。こうした格付けの利用は1980年代から90年代にかけて急速に広がった。

 公的機関が格付けを利用しようとすれば、気になるのは「その格付けを行っている会社は信頼できるのか」である。米国証券取引委員会(SEC)は、規制目的で使用できる格付け会社を認可する制度を1975年に作った。ここで認められた格付け会社は“NRSROs(Nationally Recognized Statistical Rating Organizations, 全国的に認知された統計格付け機関)”として、公的に活用可能な格付けを提供できることとなった。お墨付きを得たわけである。

 権威になびくのは世の東西を問わない。当局が「これを基準にするのだ」といえば、その“基準”には投資家の関心も高まる。ムーディーズやS&Pなどの既存格付け会社はこの波に乗って大きく成長した。格付け会社への批判に「あまりにも業界として寡占が過ぎる」というものがある。筆者も同感であり、その反省から近時のNRSROsの基準は大幅に拡大されたが(これはこれでまた問題なのだが)、寡占と呼ばれるに至るその端緒は、こうした公的認定制度にもあったといえる。

 ともあれ、こうした公的機関による活用は各国にも広がっていき、2004年に至っては国際的な銀行規制であるバーゼル規制が、格付けを軸としたリスクマネジメントを銀行に求めるようになった。規制導入当時は「格付け会社へのボーナス」などと揶揄されたのは、前回述べた通りである。

 格付け会社は世界的な活用の広がりに対応すべく、積極的な拡大戦略をとる。既に1980年代からグローバル化を進めていたムーディーズ、S&Pの二社はその動きをさらに加速させ、この二社に対抗すべくフィッチ・レーティングスはIBCAやDuff & Phelps Credit Rating、さらにはThomson BankWatchなどの買収を繰り返し、業界第三位のポジションを築いた。同社の買収が完了したのがちょうど2000年だったのは、その先に起こった格付け会社の短い春を予感させるような象徴的な出来事である。この年ムーディーズは、ニューヨーク証券取引所に上場を果たしている。

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「格付け依存で緩んだ証券化市場の規律」の著者

松田 千恵子

松田 千恵子(まつだ・ちえこ)

首都大学東京大学院教授

1987年東京外国語大学外国語学部卒業。2001年仏国立ポンゼ・ショセ国際経営大学院修士。日本長期信用銀行、ムーディーズジャパンを経て、コーポレイトディレクションなどでパートナーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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