「記者の眼」

トヨタ源流企業の静かな挑戦

電気自動車が迫る部品会社の自己変革

バックナンバー

2012年2月3日(金)

1/2ページ

印刷ページ

 昨年12月に開かれた東京モーターショー。華やかな完成車メーカーのブースに挟まれるように、多くの自動車部品メーカーがブースを構えていた。歯車やシリンダーなど一見すると地味ながらも、各社の技術陣が全力で開発した部品が紹介されている。そのなかで、一風変わったEV(電気自動車)が見つかった。白い車体に青を基調にしたデザインの商用車は「e-Porter(イーポーター)」と書かれている。出展者は豊田自動織機だ。

豊田自動織機は自社技術を集めてEVを独自開発した

 トヨタ自動車の源流企業として知られる同社は、トヨタからエンジン生産や車両組み立てを請け負っている。フォークリフトでは世界でトップクラスのシェアを持つ。しかし、自社でEVは生産していないはずだ。

豊田自動織機が手作りEV

 話を聞いたところ、「自動車の電動化をにらみ、電動パワーユニットを自社で開発した」と担当者は説明する。電動フォークリフト事業でモーターや電気制御などの技術は豊富に蓄積している。ならば、この技術をEVに転用できないかと考えて、モーターやインバーターを一体化した「EV用パワートレインユニット」という製品を開発した。これを車両に積み込みバッテリーとつなげれば、EVが完成するという簡便性が売り物だ。

 この新製品をアピールするには、どうすればいいか。ふと社内を見回すと車両組み立て事業を通じ、自動車の生産ノウハウを持っている。ならば自動車を作ってしまおう、と考えて生まれたのがイーポーターだった。フレームを自社で設計し、駆動装置を組み込んだプラットフォームを手作業で作り上げたという。よく見ると塗装の厚みにムラがあるのも「手作りですから」(同社)と言われれば納得できる。

 駆動装置をコンパクトにまとめたことで広い車内空間を実現し、ドアの開口部を大きく広げて荷物の積み下ろしなど使い勝手を向上させた。もちろん低騒音で排ガスが出ないため、工場内での物流作業に適している。この新型車を発売する予定は現時点ではないが、心臓部であるパワーユニットは、外販していく考えだ。

 ガソリン車がEVになると、どうなるか。ガソリンが電池に、エンジンがモーターに置き換わる。技術の結晶であるエンジンが不要になると、自動車メーカーが築き上げてきた技術的な優位性は、大きく低下する。1月30日号の日経ビジネスの特集記事、「走り出すEV産業」で紹介したように、世界各地でEVベンチャーが誕生しているのも、自動車産業への参入障壁が一気に低くなったことを示している。

 それでもEVという製品がある自動車メーカーに対して、エンジンの部品やガソリンタンク、燃料やオイルのチューブを作っている部品メーカーはさらに深刻だ。何しろ作っているものが、使われなくなってしまうのだ。ホンダの伊東孝紳社長は「部品メーカーが抱いている危機感は相当なもの」だと指摘する。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント0件受付中
トラックバック
著者プロフィール

阿部 貴浩(あべ・たかひろ)

日経ビジネス記者。日本経済新聞で中堅・ベンチャー企業部や証券部、名古屋編集部などを転々とし、2011年春から日経ビジネス編集部の片隅に席を見つける。製造業とのかかわりが長く、自動車や機械、造船など「物づくり企業」を幅広く担当。メーカーのおじ様方と飲みに繰り出しては経済実態とかけ離れた円高に憤り、震災復旧の苦労話に涙ぐむ。いつの間にやら会社近くの「六本木・麻布」より「神田・新橋」を好むようになった。



このコラムについて

記者の眼

日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン