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今や「ユーロ」は第1次大戦後の「金」と同じ

危機回避策はインフレの導入で、世界は確実にそこへ向かう

  • クレム・チャンバース

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2012年2月10日(金)

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 父がコモディティー・トレーダーだったことから幼少の頃より投資に関心を持ち、投資に身を投じたという筆者。18歳以降はコンピューターゲームやオンラインゲームの開発に集中していたが、最近は英BBCや米CNBCのビジネスニュース番組に登場したり、英紙「ガーディアン」、米「フォーブス(電子版)」、中東最大の英字新聞「ガルフ・ニューズ」などに経済コラムを寄稿。大胆に世界経済の今を斬り、独自の視点で現在の情勢と今後の行方を分析することで知られる。

 第1回となる今回は、「ユーロはいわば第1次大戦後の金本位制だ」と断じる同氏から見るユーロ危機の解決策と、たとえ欧州危機を回避できても、世界経済が向かうインフレ時代突入のシナリオを披露してもらう。

 ユーロが現在、直面している問題は、ある意味、世界経済が第1次大戦後に金本位制を巡って悩んだ問題と同様である。

 脆弱な欧州経済は、いわば第1次大戦後の金本位制のもとに置かれた各国経済と同じ状況にある。ドイツが価値の下落を防ぐのに熱心な(いや、熱心「だった」と言うべきかもしれない)ユーロは、まさにかつての金のような存在となっている。経済危機に直面している欧州各国は、自らの紙幣を印刷することもできないからだ。

何故、英国は「トリプルA」の格付けを維持できているのか

 第1次大戦後、金本位制が世界経済を不況に追い込んだように、ユーロが欧州各国を今、不況に陥れようとしている*1

*1:第1次世界大戦後当時の世界経済は金本位制をとっており、各国は自国が保有する金の保有量に応じてしか自国通貨を発行できなかった。不況に直面した国の多くは、金本位制から離脱し、自国紙幣を大量に刷り、自国通貨を切り下げ、輸出競争力を高めることで経済の回復を図ろうとした。現在のユーロ圏諸国は、もはや自国通貨を持たないため、通貨供給量を増やして、自国通貨の切り下げによる経済回復の道を追求することが出来ないという意味で、筆者は現時点のユーロ危機と第1次大戦後の経済危機は似ているとの指摘だ。

 ユーロは「紙」だ。金の供給を増やすには造幣機のスイッチを入れるよりはるかに労力を要するが、ユーロの供給を増やすには、ドイツを説得し、欧州全体で造幣機のスイッチを入れさせればそれで解決する。

 ユーロが導入される以前の欧州であれば、今回のような危機は発生しなかった。各国が、自国の競争力を回復させるべく、自国の通貨供給を増やすことで自国通貨を切り下げ、負債を返済できる程度のインフレを導入すればすんだからだ。

 現在、英国が取っている政策がまさにこれで、英国の国債が依然として最高格付けである「トリプルA」を維持できている理由はまさにここにある。英国が債務不履行(デフォルト)を起こすことはない。デフォルトのリスクを避けるべく、ポンド紙幣を増刷させすればすむからだ*2

*2:実際、英国の消費者物価上昇率は昨年12月、年率で4.2%を記録。11月の同4.8%から低下したものの、英国中央銀であるイングランド銀行が目標とする2%を大きく上回っている。このインフレは、「英政府は決して口にこそしないが、意図的に誘導されているものだ」というのがクレム氏のかねての主張だ。

 英国のデフォルト回避のための準備は万端だ。新札を増発し、債券を所有者から買い戻すという、綱渡り的な発想は極めて有効であり、英国をイタリアやスペイン、アイルランド、ギリシャといったひどい苦境に直面している国と区別している。

 つまり、今の欧州の危機を解決するには、まずドイツをこのインフレ政策に参加させることだ。公的な場ではいろいろな議論が出ているが、この「インフレ策導入」という政策を巡る取引は既に終了しているようだ。それは、突然のユーロ安が物語っている。ユーロが前述した「金本位的通貨」から「通常の通貨」に移行したということで、これはドイツが造幣機を回すことを許したことを意味する。

 ドイツの同意が本当であれば、欧州連合(EU)及びユーロが世界経済の足を引っ張るというユーロ危機のシナリオは終わったと判断できるだろう。

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