「記者の眼」

従業員への眼差しに見る企業の死角

ホンダ、ソニーのはらむ矛盾

  • 北爪 匡

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2012年2月17日(金)

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 不可解さが残る記者会見。そういう場面に出会うことがしばしばある。

 ホンダとソニー。言わずと知れた、戦後日本の産業史を代表する独創型企業である。高い技術力に裏打ちされたイノベーティブな商品力によって、日本を、そして世界を魅了してきた2社だ。

 去る1月31日、ホンダは2011年10〜12月期の決算発表会見を開いた。会見の話題の中心となったのは、昨年末のタイの大洪水による被害状況および生産再開に向けた計画だった。

 タイ・アユタヤに4輪車工場を持つホンダは、日本の自動車メーカーの中では唯一、大洪水の被害を直接、受けた。2mを超える水によって工場は壊滅的な被害を受け、販売面の影響もあった。その被害総額は営業利益ベースでおよそ1100億円に達した。

歯切れの悪い春闘と増配の矛盾

 この会見の終盤、ある記者から質問が出た。

 「間もなく春闘の季節です。今期は増配も計画しているようですが、春闘に対するスタンスはいかがでしょうか?」

 これに対するホンダの池史彦・専務の回答は、

 「昨年の震災、タイの洪水での従業員の頑張りには応えたいが、単独の業績は…」

 と、歯切れの悪いものだった。

 同社の2012年3月期の連結純利益の見通しは前期比で約6割減の2150億円、単独では同42%減の500億円となっている。昨年の東日本大震災、タイの大洪水という空前の自然災害の影響を全面に受け、「類いまれなる異常値」(池専務)であることは間違いない。

 一方でホンダは今期、前期から1株当たり6円多い、60円の通期配当を予定している。これは中長期的な配当性向のバランスを考慮したものとしている。確かに、業績の絶頂期にあった2008年3月期に通期で86円の配当をしていたことを考えれば、その回復は道半ばと言えよう。

 しかし、春闘に向けた歯切れの悪い回答と、この増配にはどこか企業としての矛盾がないだろうか。ステークホルダーとして従業員よりも株主を優先した、そう受け止められてもいたしかたない。

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