「KAPION(カピオン)〜投資を引き出す計画の作り方」

これがスティーブ・ジョブズ直筆の商談メモ

〜3つの単語で語る「ベンチャーの極意」

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2012年2月22日(水)

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 まずはこのメモ書きを見てください。

 これはスティーブ・ジョブズ氏の直筆による商談メモです。ここには2つのことが書いてあります。  1つは会社の売却額、もう1つは"Tonight, Sign, Lockup”との走り書き。「今夜、サインして、決定」という即断即決の意味。これでもう鍵をかけたから、これ以上の変更なしという約束を、この3単語で書き表しています。

 この会議には、ジョブズ氏と(この「KAPION」のコラムを一緒に書いている)曽我弘さん以外、誰も同席しなかったので、このように合意したら、反対者はいません。決断結果がうまく行かなければ、お互い当事者側の責任を取る、それだけのことで、誰かに責任を押しつけることはできない−−これがCEOの仕事で、これ以上簡潔なルールはありません。

 あとは弁護士が関係者を含めてちゃんと詳細を詰めていくという作業の流れになります。この数行のメモに基づいて、弁護士は500ページ以上の書類を作るというのも驚きです。この2カ月に及ぶプロセスに最後まで付き合ったことは、今となっては曽我さんにとって大変貴重な経験だったと言います。

 この商談メモから、ジョブズ氏が世に生み出したiPadやiPhoneなどの製品と一貫したものが見えてきます。目的を決めたらそれに向かって最短で到達するようにことを運ぶ。CEOとして自分で判断し自分で責任をとりながら一切の無駄を省いて進む。一番彼が重視しているのがスピードで、重要なビジネス判断だけをどんどん進めて、その結果には自ら責任を取るというルールでデザイン、開発、販売、ブランディングのやり方も含めて、全て自分で決めて突き進むのが「ジョブズ流」なのです。

 そのジョブズ氏の商談メモから、私たちは3つのヒントを学ぶことができます。

何十億円の企業売却が3日で決まる

 さて、このメモは前回もお話ししたように、曽我さんとジョブズ氏の二人だけで企業売却の商談をした時に、ジョブズ氏が目の前でメモを書き、その結果を最後に曽我さんに手渡したものです。

 ジョブズ氏が欲しがった、曽我さんの会社はSpruce Technologies, Inc.というベンチャーです。曽我さんがアメリカ人(VPエンジニアリング)とドイツ人(CTO)の3人で、1996年にゼロから立ち上げ、映画からDVDを製作するためのオーサリングシステム開発をしていました。設立から4年半で約90人の従業員、約1500万ドル(期の半ばなので推定)を売り上げるまでに成長しました。

 当時DVDを製作していた見込み顧客であったTime Warner社に何度もヒアリングを重ね、システムダウンしないシステムの信頼性と徹底的に使いやすいGUI(graphic user interface)を開発したのです。

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著者プロフィール

能登 左知(のと・さち)

能登 左知サチコーポレーション取締役
和歌山市生まれ。ロータリークラブより留学その後、Kansas City Art Instituteへ進学、工業デザイン科BFA学士修了。現代経営論プログラム終了。帰国後、国・県・地方自治団体のデザイン経営専門家として創業における事業の見せ方についてアドバイスする。またその約1500件の事例を全国各地でセミナー・講演活動している。また、現在は工業デザイナーとして水素燃料電池からアクセサリーまで幅広くデザインする日々を送っている。(写真:菅野 勝男)

曽我 弘(そが・ひろむ)

1954年清水東高校卒、1958年静岡大学工学部卒、東京大学より工学博士授与。1960年日本電子から(株)八幡製鉄所に入社、新日鉄研究本部計測制御件センター所長を経て1985年以来新日鉄エレクトロニクス事業部でコンピュータ周辺機器事業の事業化を推進。3Mをはじめ数社の米国企業とのジョイントベンチャーを設立、その日本での事業化を担当。新日鉄退職後、1991年シリコンバレーに移住し、画像圧縮技術開発のベンチャー企業EidesignTechnolgies,Inc.を設立し経営にあたる



このコラムについて

KAPION(カピオン)〜投資を引き出す計画の作り方

シリコンバレーで起業し、5年後にスティーブ・ジョブズとの交渉の末、Apple社に売却した経験を持つ曽我氏。これまで約500件のベンチャー企業に資金調達のアドバイスしてきた能登氏。2人がシリコンバレーと日本での起業に対する考え方の違いを踏まえながら、起業を成功させるための本質に迫る。共著の「シリコンバレー流起業入門―投資を引き出すためのビジネスプラン作成ガイド」がある。

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