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“ブックオフビジネス”は業界全体で取り組むべき

「破綻しない」デジタルアーカイブ化の可能性とは

2012年3月7日(水)

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 ここ10年ぐらいの出版界において、大きな問題は「ブックオフ」(新古本流通)と「電子書籍」だろう。特にブックオフの問題は、出版と出版流通ビジネスの根幹を否定する深刻な問題である。

 ブックオフは出版業界にとって異物である。本の流通を扱いながら、既存の出版業界にはなんの利益も与えずに、むしろ売り上げを奪う吸血虫のような存在である。繁栄するこの異物は何者なのであろうか。時代の変革期には往々にして、過去の体制を崩す異物に未来の体制を築くヒントが秘められていることがある。まずその本質を見極めなければならない。

「本は捨てられない」から生まれたビジネス

 そもそも新刊が古本として流通しはじめたのは、80年代バブルの末期頃、ホームレスたちが始めた「雑誌の最新号を集めて駅で売る」というところからである。それまでも、電車の棚に置かれた雑誌や駅ホームのゴミ箱に置かれていた雑誌を拾うというようなことはありがちだった。それを、ホームレスの労働力を組織的に利用して集めさせ、1冊100円で売るというビジネスモデルを考えた人がいて、一気に全国に普及した。

 当時、故・内田勝さん(60年代後半の少年マガジン黄金時代の編集長)は、「あれだけでマンガ雑誌の市場は100億円の損失だ」と言っていた。数字の根拠は分からないが、確かに、マンガ週刊誌が一番売れていて、僕もよく買っていた。定価で売っている売店のそばで、発売日と同時に新刊と同じようなものが100円で売っていれば、買ってしまう。雑誌は保存するものではなく、どうせ読んだら捨ててしまうものだから。

 なぜ、それだけの市場破壊力を持った非合法な活動に対して、出版マスコミ界は反対の声をあげなかったのだろうか。想像するに、当時の時代背景があった。地球環境の保全が騒がれ、リサイクルの意味が問われていた時代である。あれだけブラックな業態で出版業界にダメージを与えているにもかかわらず、マスコミが大きな批判をしなかったのは、インテリの編集者や新聞記者に、紙を大量に印刷してゴミを増やすだけの雑誌や新聞といったマスメディアに対して、後ろめたさがあったからかも知れない。

 また格差社会を否定する人たちにとって、ホームレスが見つけた生活の糧を真正面から否定することに躊躇があったのかも知れない。なぜか、都市のあらゆる駅前に著作権無視のビジネスモデルが登場しても、抗議の声が聞こえてこなかった。

 ブックオフは1990年に坂本孝氏によって創業された。2007年に不祥事で失脚するまで、短期間で全国的な展開を果たした。ブックオフのメイン商品は、ホームレスの雑誌とは違い、一般書籍である。

 僕たちは、なぜか雑誌は捨てることが出来ても、書籍はなかなかゴミ箱に捨てるということは出来ないものである。子どもの頃に「本を大切にしなさい」と言われて育ったからかも知れないし、多くの人が読書によって人格形成に影響を与えてもらったから、書籍そのものに愛情と恩義を感じているからなのかも知れない。ブックオフとは「捨てられない本」を引き取ってくれる店であり、それは「捨てるぐらいなら、誰かに読んでもらいたい」という不思議な感覚を持つ書籍だから成立したのだろう。

コメント14件コメント/レビュー

■この辺りの議論は、図書館学や、図書保存、資料・文化財保存の各専門分で行われております。■正確な知識に基づかない議論では、多くの支持を得たり、問題を提起することは出来ないと思います。(2012/03/08)

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「“ブックオフビジネス”は業界全体で取り組むべき」の著者

橘川 幸夫

橘川 幸夫(きつかわ・ゆきお)

デジタルメディア研究所代表

1972年、音楽雑誌「ロッキングオン」創刊。78年、全面投稿雑誌「ポンプ」を創刊。その後も、さまざまな参加型メディア開発を行う。現在、阿佐ケ谷アニメストリート商店会会長、未来学会理事などを勤める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

■この辺りの議論は、図書館学や、図書保存、資料・文化財保存の各専門分で行われております。■正確な知識に基づかない議論では、多くの支持を得たり、問題を提起することは出来ないと思います。(2012/03/08)

何でもかんでも古い体質を無くせばいいというものではない。銀座のど真ん中のディスカウント系に違和感を感じたのと同じだと思う。棲み分けが大切。そうやってどんどんめちゃくちゃな都市になっていくだけだろう。ただ、下らない薄っぺらなのに立派な装丁された本の乱出版。数十分で読める物ばかりの昨今に旧来の古本屋は大変だろうと思う。このままでは、軽薄な世の中になるばかりだ。(2012/03/08)

「売り手」側の人間を、少し甘く見ていませんか? ちゃんと、値がつく本は専門の古書店へ、二束三文にしかならない本はブックオフに売っていますよ。(ここから愚痴↓)ブックオフはポイント制度が変わるたびに、改悪になっていますねぇ…… 現在の「一日中、どの店でも割引」って、複数の店舗がある都市部でなければ使えないですよ。(2012/03/07)

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