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「最後の船」からの贈り物

三菱重工、危機感が動かす構造改革

  • 阿部 貴浩

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2012年3月16日(金)

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 3月9日の朝、三菱重工業の神戸造船所には冷たい雨が降っていた。お年寄りや家族連れなど多くの人が地下鉄の駅から列を成し、造船所の門をくぐる。「もう空っぽや。ここで長い間、飯を食わしてもらったのに」。初老の男性が作る船の無くなった、がらんどうの工場建屋をのぞき込んで、寂しげにつぶやく。

 神戸造船所は、この日をもって商船建造を終える。船腹余剰による受注条件の悪化、価格攻勢を仕掛ける中国や韓国メーカーとの競争、そして円高。造船業を取り巻く環境は、かつて無いほどに厳しい。「このまま国内の建造能力を維持することは、どう考えても難しい」(三菱重工の原壽常務)と判断し、神戸での商船建造から撤退し、下関と長崎にある造船所へと機能を集約する。

6500人が最後の進水式を見守った

 波打ち際に巨大な船が鎮座し、式の始まりを待っている。全長200m、幅32mで、総トン数は6万200トン。6400台の乗用車を搭載できる自動車運搬船「エメラルドエース」だ。太陽光発電装置と蓄電設備を備え、停泊中はエンジンを動かさないで済む最先端の「省エネ船」で、1905年から約1600隻の船を建造してきた神戸造船所の、最後の船になる。

 「あそこの応接室に入ると、調度品や醸し出す雰囲気から長い歴史を感じる。その歴史が終わるかと思うと、ちょっと込み上げてくるものがある」と、かつて大宮英明社長は話していた。この日も「壁に今まで建造した船のシルエットが貼ってある。まだ、貼れる余地がある。私の代で閉じる決断をしたことは複雑で、残念な気持ちだ」と感傷的な思いを口にした。しかし、「造船事業で3つの大きな設備を持ち続けることは難しい」と、口調を改める。

神戸の造船機能、長崎と下関へ

 三菱重工の主要な造船拠点は、神戸のほかに長崎と下関がある。長崎は巨大な造船ドッグを持ち、大型船の建造に向いている。下関は海洋探査船やケーブル敷設船といった、特殊な船舶の建造が得意だ。国内で建造能力を減らし固定費を圧縮しようと考えた場合、選ぶとしたら神戸になるのは自然だろう。

 今後、神戸の造船機能は長崎と下関に移す。商船建造に携わる約350人の人員は一部を潜水艦の建造に振り向けるほか、神戸造船所内で原子力やタービン事業などに配置転換する。神戸造船所と言っても売上高に占める造船の比率は、今や17~18%程度に減っており、「数字で見れば、それほど大きくはない」と門上英・神戸造船所長は話す。

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