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 無論、iPhoneは極端なケースで、誰もがこんなヒット商品を生み出せるわけではない。けれども、既存の形にとらわれない、柔軟な発想ができる人材はイノベーションが次々と生まれるシリコンバレーでも希少な存在だという。

希望者殺到、スタンフォードの「デザイナー」養成所

 そんな中で、面白い取り組みを始めた大学がある。スタンフォード大学は、2006年から、柔軟な発想・思考を研究する専門機関を開講したのである。「the Hasso Plattner Institute of Design」、通称「dスクール」と呼ばれている。

 従来、広義のデザイン能力を鍛える場は、職場などの「実践の場」以外にはなかった。というのも、柔軟な発想や思考は、従来の教育の枠組みには当てはまらなかったからだ。経済学、法学、政治学、アートといった伝統的な学問を極めたとしても、必ずしもデザインができる能力が身につくとは限らない。

 スタンフォードは、この課題に取り組んだ。

 「既にあるものを、いかに効率化していくかが従来の学問。いわば、『A』を『Z』に進化させるイメージ。けれど、ここでは、何もない状態からAを創り出すことに集中する」。dスクールのクリス・フリンク氏はそう説明する。Howではなく、Whatを日々追求する場だといえる。

 dスクールでは、従来の「教師が生徒に教える」いった講座はほとんどない。大半がプロジェクト形式で、新しい思考方法を実践していく。先に述べたような、デザイン思考の基本的な方法論を学び、実践する「場」の提供に徹している。

 もっとも、柔軟な発想を生むための方法論はきわめてオーソドックスだ。端的にいえば、ブレーンストーミングの繰り返し。付箋とホワイトボードなどを駆使し、参加者が、様々な意見を積み重ねていく。

 ここで、ようやく冒頭の樋渡市長の話につながる。記者が関心したのは、参加者の顔ぶれだった。

 dスクールの学生は、必ず、スタンフォードのいずれかの学部に所属するか、大学院で専門課程を学んでいなければならない。各人が専門を持ち、寄り集まった組織なのだ。

 プロジェクトは、必ず異なる専門を持つ学生がチームを組み、問題にあたる。医学、法律、ビジネスなど、様々な専門的見地から問題を評価し議論し、発見しながら、解決の道を探っていく。


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