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原発リスク同様、想定外に大きい「中銀リスク」

中央銀行だけを見る経済的視野の限界

2012年3月29日(木)

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 筆者が国際資本市場の現場で日夜悪戦苦闘していた20年ほど前、中銀への注目といえば政策金利をどう動かすのか、という一点に絞られていた。いわば、金利の調整弁である。正直に言えば、市場で働く身にとって中銀とはそれだけの存在でしかなかった。

 だが現在では、市場の話題のほとんどを中銀が占めている。ゼロ金利や量的緩和が異形の政策であるように、こうした市場模様もまた筆者にとっては異様に映る。時代は変わった、というだけで済む話なのか、どうも釈然としないものがある。高格付けと高リターンの怪しげなサブプライム商品全盛の頃にも、時代は変わったのだ、と言われたものである。

 1990年代の日銀に追随するように、リーマンショック以降、英国中銀や米国FRBも量的緩和に向かい、最後まで抵抗を見せていた欧州中銀すらも、昨年末には3年間の流動性供与で銀行の国債購入を促す事実上の「裏口量的緩和」を行った。この調子で行けば、こうした「非伝統的」と言われる政策が、徐々に恒常化していずれ伝統的政策になってしまうかもしれない。

 もっとも、17世紀に英国中銀が設立された目的が、国債引き受けと銀行券の発行を通じて同政府の軍事費を捻出することであったことを思えば、現代の各国中銀は、単に先祖がえりしているだけ、と見ることも出来る。財政ファイナンスがどんな結果を招くか、という論点を別にすれば、昨今の中銀の判断は設立原点に戻ったものだ、と言えなくもない。

バレンタインデーに起きた「事件」

 日本でも、バレンタインデーに日銀が事実上のインフレターゲットと追加緩和という意表を突く戦術で、為替市場と株式市場のセンチメントが一変するという「事件」が起きた。市場は勿論、輸出産業や一部の政界・学界などは拍手喝采しているが、ここまで中銀に依存し敏感に反応する市場経済の姿にかなりの違和感を覚えている中高年は、おそらく私だけではないだろう。

 為替や株式などの市場は、日銀が「漸く世界の金融緩和競争に本格的に参戦する決意を示した」と受け止めた。超円高が一服し株安が修正される動きは当面継続しそうな気配だが、政界には「まだ努力が足りない」「アグレッシブなFRBとの距離はまだ遠い」とさらなる緩和圧力を掛けようとする勢力がある。

 日銀は、そうした攻撃に抵抗しながらも、実質的には膨大なマネー供給を続けざるを得ないだろう。他国の中銀も大同小異である。問題は、その時間稼ぎの間に実体経済が回復するかどうかであるが、残念ながらそのシナリオ確率はすべての国においてかなり低い、というのが筆者の読みである。「中銀リスク」は、原発リスクと同様に、人々が想定しているよりも大きいのではないか、と密かに懸念している。

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「原発リスク同様、想定外に大きい「中銀リスク」」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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