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「日本はいつまで『国家による殺人』を続けるのか」

死刑廃止を求めるEUからのメッセージ

  • 市村 孝二巳

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2012年4月25日(水)

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 小川敏夫法相は3月29日、3人の死刑を執行した、と発表した。死刑の執行は、2010年7月28日、当時の千葉景子法相が東京拘置所で立ち会いのうえ、2人を執行して以来、1年8か月ぶりのこと。民主党政権としては2回目である。

 執行したのは、山口県下関市で5人を殺害、10人に重軽傷を負わせた無差別殺傷事件の上部康明死刑囚(48、広島拘置所)、横浜市で妻の家族3人を殺害した古沢友幸死刑囚(46、東京拘置所)、宮崎県内で2人を殺害した連続強盗殺人事件の松田康敏死刑囚(44、福岡拘置所)の3人だった。

 この時、日経ビジネス4月23日号の特集「ユーロ再生の条件 最前線で見た期待と不安」の取材を進めていた私は、ふと思い出した。それは、欧州債務危機に関する一連の取材の中で耳にした、欧州対外活動庁(EEAS)アジア大洋州局のミヒャエル・ライテラー上級顧問の言葉だった。

「日本と価値観が違う唯一の点」

 「戦略的パートナーシップには共通の価値観が必要だ。日本と欧州連合(EU)の価値観はほとんど同じだ。民主主義、法の支配…。ただ、死刑だけは違う」

 3月5~6日、東京都内で開いた日EU政策策定者セミナー「欧州債務危機と今後の欧州統合の行方」(外務省主催、駐日EU代表部協力)での発言であった。

 私は2004年秋から2008年夏まで4年間、日本経済新聞のジュネーブ支局で、国連や世界貿易機関(WTO)など、数多くの国際機関を取材していた。ジュネーブには国連欧州本部のほか、かつて緒方貞子氏がトップを務めた国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連人権高等弁務官事務所(UNOHCHR)などの国連機関も本部を置く。国連の中ではいわば人権問題のメッカとしての役割を果たしている。

 私が目にした大きな出来事の1つは、2006年6月、それまでの国連人権委員会を改組、発展させた「人権理事会」の誕生であった。当時のコフィ・アナン事務総長が進めていた国連改革の一環で、権限や影響力はともかく、組織上はニューヨークの安全保障理事会などと同格の「理事会」に格上げした。

 この人権理事会で、日本とEUは毎年、日本人を含む外国人の拉致問題に代表される、北朝鮮の人権問題の改善を求める決議案を共同提案している。今年も3月22日、日EUの決議案が採択された。日本政府が、この人権理事会で中心的な役割を果たし、世界の人権問題に取り組んでいくうえで、価値観を共有する最も重要なパートナーがEUであることは間違いない。そのEUと唯一、死刑制度については価値観を共有していないのである。

 国連人権理事会を含め、国連では総会や委員会などさまざまな場で、日本に対して死刑制度廃止や死刑執行停止を求める決議や勧告がなされてきた。その動きを主導しているのもEUだ。

死刑廃止はEU加盟の条件

 EU加盟国は、すべて死刑制度を廃止している。死刑廃止はEU加盟の条件の1つなのだ。そのEUは今回の日本の死刑執行をどう見ているのか。

 EU代表部とEUIJ早稲田は3月29日の死刑執行を踏まえ、4月18日、東京都内のEU代表部で「死刑廃止に向けて:欧州の経験とアジアの見解」と題するシンポジウムを開いた。その冒頭、挨拶に立ったハンス・ディートマール・シュヴァイスグート駐日EU大使も、「日本とEUは人権に対するコミットメントを共有し、さまざまな人権問題や懸念に関して立場を共有している。ただし、1つだけ例外がある」と述べた。その死刑制度の問題について、理解を深めるのが今回のシンポジウムの狙いだ。基本的には死刑廃止論者の集まりなので、存廃を巡って激しい議論が闘わされることはなかったが、世界が日本の現状をどう見ているかを知るには良い機会となった。

 EUの外相に当たるキャサリン・アシュトン外務・安全保障政策上級代表は3月29日、日本の死刑執行後直ちに声明を出した。「過去20カ月間は死刑が執行されていなかったにもかかわらず、再び執行されたことについて、深い遺憾の念を抱いている。EUはいかなる場合および状況においても死刑が行われることに反対しており、一貫して死刑の全世界的撤廃を提唱してきた。EUは、死刑は残酷で非人道的であり、人間の尊厳を守るために死刑廃止が不可欠であると確信している」

 EUをはじめ、日本が2010年7月28日以来、死刑を執行していなかったことで、世界の死刑廃止論者の間では、民主党政権は事実上の死刑執行停止(モラトリアム)へと進みつつあるのではないか、という期待が高まっていた。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが3月27日に発表した2011年の年次死刑統計(2011年の死刑判決と死刑執行)は、2011年に「日本では19年ぶりに死刑執行がなかった」と明記した。

 今回の死刑執行は、その翌日の出来事だった。

コメント45件コメント/レビュー

私は死刑の存続/廃止を超え、提案したいことがある。それは、故意の殺人を犯した者はすべからく死刑に処すということだ。殺人については動機や犯行時の精神状態によって刑罰が左右されること自体が不自然である。殺人という絶対的な罪を死あるのみ。これ程の強いメッセージが法になければ、これからも金や権力のために殺される人はなくならないのではないかと考えたからだ。交通事故にしてもしかり、業務上過失致死罪と飲酒運転での殺人行為が同等とは考えにくい。最後に、コラムの筆者殿はEUとの比較をしていたが、なぜ欧米が正しい? 我が国はアジアの一国家である。国内法はその国の文化である。否定するならば、どうぞEUに移住されたし。(2012/05/02)

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私は死刑の存続/廃止を超え、提案したいことがある。それは、故意の殺人を犯した者はすべからく死刑に処すということだ。殺人については動機や犯行時の精神状態によって刑罰が左右されること自体が不自然である。殺人という絶対的な罪を死あるのみ。これ程の強いメッセージが法になければ、これからも金や権力のために殺される人はなくならないのではないかと考えたからだ。交通事故にしてもしかり、業務上過失致死罪と飲酒運転での殺人行為が同等とは考えにくい。最後に、コラムの筆者殿はEUとの比較をしていたが、なぜ欧米が正しい? 我が国はアジアの一国家である。国内法はその国の文化である。否定するならば、どうぞEUに移住されたし。(2012/05/02)

言いたいことは先にコメントされた皆さんが過不足なく記載してくださっていた。タイトルから斬新な死刑廃止論を期待したが、手垢のついた「死刑=野蛮国」論からなんら深化したところがない。誰を洗脳し、罪悪感を書きたてようとしたものか不明だが、現行の法制度を(問題点はあれ)容認している者のリテラシーにも敬意を払ってもらいたいもの。宗教・国民性・比較文化論、すべてにおいて検証不足の感が否めない。猛省してほしい。(2012/04/30)

死刑の存廃と死生感は不可分であり、死生観は宗教観と不可分でしょう。また、「選択肢は2つのみであり、一方が完全なる正義でもう一方は完全なる悪である」といった価値観と、それを傲然と押し付ける価値観もまた不可分であると思います。本記事も含め、今の死刑廃止論は、「死刑は絶対的悪である」という傲然たる死生観を持ち、それを一方的に押し付けようという姿勢が垣間見え、とても納得できるものではありません。それは単なる死刑存廃を超えた個々の価値観を守るか奪うかの尊厳の問題になっているように見えます。(2012/04/27)

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