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TPPの源流は「文人宰相」

30年の時を経て日本が見失った自由化をリードする気概

2012年5月1日(火)

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 日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加に向けた動きが膠着状態に陥っている。米国が保険、自動車、牛肉の3分野の譲歩を求めるなど揺さぶりをかけていることも理由の1つだが、日本国内でなお根強い反対論が渦巻いているのが最大の壁になっている。

 日本政府は昨年秋以降、米など関係する9カ国に「事前協議」入りを表明し、情報収集など正式交渉入りへの地ならしを進めている。各国との協議が進む中で、TPP反対派が懸念する「米が公的医療保険制度の廃止を要求する」といった推測が誤りであることが判明。関税撤廃の例外設定の余地があることなども分かってきた。それでも、反対派が矛を収める気配はない。

 反対派が強気の姿勢を貫く背景には、TPP反対派と消費増税反対派の顔ぶれの多くが重なっていることがある。消費増税論議への影響を恐れる野田佳彦首相の足元を見ているというわけだ。

 「農業壊滅」論に始まり、果ては「米国の陰謀」論まで喧伝され、反対派から袋叩きにされるTPP。だが、歴史を紐解くと、この国の元首相が提唱した構想こそが、この広域経済連携の枠組みの源流だったといえるのだ。

30年前に掲げた「環太平洋連帯構想」

 後に「文人宰相」「哲人政治家」と称された大平正芳・元首相が1978年に打ち出した「環太平洋連帯構想」がそれだ。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)や豪州、カナダ、ニュージーランドなど環太平洋の各国間の政治、経済両面の交流や自由な貿易を活発化させようという狙いがそこにはあった。

アジア太平洋の広域経済連携の歩み
1978年 大平正芳元首相が「環太平洋連帯構想」を提唱
1979年 大平元首相の下に「環太平洋連帯研究グループ」を設置、中間報告を提示
1980年 大平元首相が豪州を訪問、フレーザー首相(当時)と構想推進で一致
豪州で日本、米国、カナダ、豪州、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)などが参加する「環太平洋共同体セミナー」を開催
以後、発展的に太平洋経済協力会議(PECC)を創設
1989年 アジア太平洋経済協力会議(APEC)発足
1994年 APECで2020年(先進国は2010年)までに域内の自由で開かれた貿易と投資の目標を達成する「ボゴール目標」を採択
2006年 シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイがTPP(環太平洋経済連携協定)の原型となる協定を締結
2010年 APEC横浜会議で、FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)実現への道筋としてASEANプラス3、ASEANプラス6、TPPを発展させる案を確認
2011年 日本がTPP交渉への「事前協議」参加を表明

 大平氏は自らの構想を具体化するため、学者と官僚からなる研究グループを発足させ、報告を求めた。

 1980年、大平氏は中間報告を携え豪州を訪問。フレーザー首相(当時)との会談で構想の推進で一致した。大平正芳記念財団に残る当地での大平氏の演説によると、大平氏は環太平洋連帯構想の目指す姿について「各国の文化的独自性と政治的自主性を理解し、信頼しつつ行われる地域協力であり、かつ、地球社会時代にふさわしい開かれた地域協力であると考えます」と述べている。

 その後、同年には豪州で日本、米国、カナダ、豪州、韓国、ASEANなどが参加する「環太平洋共同体セミナー」を開催した。これが発展的に太平洋経済協力会議(PECC)の創設につながっていく。

 1980年5月にまとまった研究グループによる報告書が東京大学東洋文化研究所のデータベースに残っている。その「環太平洋連帯の構想」をめくると、約30年後の今でも色あせることのない広域経済連携の重要性を訴える文言が目に入ってくる。

 例えば、以下の箇所はどうだろう。少し長いが、一部を引用する。

 「近年われわれを深く憂慮させるのは、第二次世界大戦後30数年にわたって世界経済の発展の基盤であったガット・IMF体制を中心とする自由で開かれた国際経済システムが、かげりを見せはじめていることである。このような現状において、われわれが日本を含めた太平洋諸国に期待することは、これら諸国がその協力関係、相互依存関係を強めることによって、自由で開かれた国際経済システムの維持に新たな活力を与え、世界経済の発展と繁栄のための基盤であるグローバリズムの新たな担い手となることである」

 日本がこの地域での経済連携作りを主導していこうという気概がにじむ。

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「TPPの源流は「文人宰相」」の著者

安藤 毅

安藤 毅(あんどう・たけし)

日経ビジネス編集委員

日本経済新聞社で経済部、政治部などを経て2010年4月から日経ビジネス記者。2012年4月から現職。政治、経済政策を中心に執筆している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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