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乗ってみた!空前の大阪発・上野行きブルートレイン

向谷実“車掌”に学ぶ企業を結びつける力

2012年5月9日(水)

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 4月27日夕刻のJR大阪駅。次の日からの大型連休に期待を膨らませ、会社や学校からの家路をたどる大勢の人々でごった返す。なかでも独特な熱気に包まれた10番線ホームは、カメラを構えた鉄道ファンであふれかえっていた。お目当ては、寝台特急ブルートレインの臨時列車、その名も「ニコニコ超会議号」だ。

たまたま通りかかった人も携帯電話で記念撮影

 この列車は、インターネットの画面上でユーザーがコメントを付け合うことができる動画サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴが、東京の幕張メッセで4月28~29日に開いたイベント「ニコニコ超会議」の参加者を関西方面から運ぶために企画された。発案者は、無類の鉄道マニアとして知られるミュージシャンの向谷実氏だ。

向谷“車掌”がご登場!

 向谷氏は日本を代表するフュージョンバンド、カシオペア(現在は活動休止中)のキーボード奏者として名が知れ渡る一方、電車の運転シミュレーターを製造・販売する株式会社音楽館(東京都世田谷区)の社長として大忙しの日々を送っている。このことは日経ビジネス2月13日号の「旗手たちのアリア~鉄道に安心捧げる音楽家」でも紹介したことがある。

 その向谷氏がこの日、薄いグレーの制服・制帽を身にまとい車掌に扮して登場すると、鉄道ファンたちのカメラから一斉にフラッシュがたかれた。敬礼のポーズを決めながら、初めて会ったはずのファンたちと古くからの知り合いのように大声で語り合っている間に、発車時刻が到来。17時49分、定刻通り大阪駅のホームを滑り出した夢のブルトレの行き先は、かつてなかった路線となる上野駅。しかも、ここから日本海側へ遠回りする長旅だ。

誰よりも表情がまぶしい向谷車掌(ドワンゴ提供)

夢を現実にする発想力とエネルギー

 向谷氏が以前から親しくしているドワンゴの川上量生会長と話が弾んだ際、全くのノリで決めたこの「夢のブルトレ」企画は、鉄道好きの向谷氏がこれまでずっと暖めていたアイデアの一部だったという。

 「夢」の企画とされる理由。それは、車両が老朽化によって激減しているほか、飛行機や新型列車に押されて利用者が落ち込んだことで、これまで多くの路線が廃止されてきた背景そのものが物語る。そのことに加え、分割民営化して久しいJR各社の連携が国鉄時代のようにはスムーズにいかなくなったという事情も透けて見える。

 もちろん、分割民営化により各社が採算重視になったのは当然のことだ。ただでさえ長い距離の運行となった今回の企画に関しても、あるJR関係者は「夜間は旅客の乗降がないにもかかわらず、安全確保のために路線上の各駅に人を配置しなければならない。コスト面に限らず、会社をまたがって人員確保の調整をするのは難しかった」と打ち明ける。

 これまでもブルトレの臨時列車としては、夏の高校野球で応援のために地方と甲子園を結ぶための貸し切り列車や、一部団体の大量移動向けはあった。しかし、運行そのものをイベント化する貸し切りの事例はほとんどなかったという。

 いざ、やろうと思ってはみても、鉄道会社の関係者ですら簡単に言ってできる話ではない。それを実現に導いていくところが向谷氏の向谷氏たる所以だ。同氏が持つ発想力とエネルギーに、回りの多くの人が巻き込まれていくのだ。

 多方面に人脈を持つ向谷氏は早速、JRや旅行会社の関係者に相談を持ちかけた。電話に出た先方の多くは最初こそ驚きを隠せなかったが、熱心な向谷氏の話に耳を傾けるうちに、いつの間にか受け入れていた。「無謀に見える今回の企画だが、JR社内にも、予想以上に前向きに受け止めてくれる情熱のある人たちが少なくなかった」と向谷氏は振り返る。

 当初は、2008年に廃止された「銀河」(東京~大阪)のように東海道線を走るルートも考えた。だが、管轄の東海旅客鉄道(JR東海)ではブルトレの運用が事実上難しいという理由で断念。発想豊かな向谷氏は次に、機関士が多く所属する日本貨物鉄道(JR貨物)に相談を持ちかけた。しかし、JR貨物の車両は駅で客車用のホームに入れない。それではと、貨物用のホームを使う案を模索したが、そこでは人の乗降ができないという。

 それでもめげない向谷氏がすぐさま思いついたのが、今回の大阪から上野に至る路線だった。管轄となる西日本旅客鉄道(JR西日本)と東日本旅客鉄道(JR東日本)、そしてツアー商品として成り立たせなくてはならないという旅行会社としてのミッションを課せられた日本旅行が向谷氏を軸にタッグを組むことになった。

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「乗ってみた!空前の大阪発・上野行きブルートレイン」の著者

松村 伸二

松村 伸二(まつむら・しんじ)

前日経ビジネス副編集長

日刊紙の日本経済新聞、リアルタイム速報の日経QUICKニュース(NQN)、テレビの日経CNBC、週刊誌の「日経ビジネス」と、日経グループの様々な媒体を渡り歩き、マーケット記事を中心に情報発信を続ける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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