東北地方で撮影があると、福島県郡山市在住の野口勝宏カメラマンに依頼することが少なくありません。福島県猪苗代町生まれの52歳。子供の頃からカメラが大好きで、中学の頃から泊まり込みの撮影旅行に出かけていたほど。大学在学中にはプロカメラマンに師事し、そのまま1982年にフリーフォトグラファーとして独立しました。腕の良さは折り紙付き。東北地方ならどこでもOKというフットワークの軽さも、メディア業界の人間にしてみればありがたいところです。
このコラムで野口カメラマンのことを取り上げたのはなぜか。それは、彼が始めたプロジェクトを多くの人に知ってもらいたいと考えたからです。
3・11の震災直後、野口カメラマンは福島県内の花の写真を取り始めました。それも、ただ花を撮るのではありません。クリエイターなどが素材として使いやすいように、すべての花に切り抜き加工を施しました。
その切り抜きもプロの技が光ります。彼が撮った切り抜きの花は産毛まできれいに切り抜かれています。どのように切り抜いているかというと、植物の影を撮り、その影を切り抜いているとのこと。白い壁とカメラの間に花を飾り、花に光を当ててシャッターを切る。そのままの状態で、ライトを背景の壁に移し、影の状態の花を撮る。この2枚を重ね合わせることで、細部まできれいに切り抜くんだそうです。

切り抜いた花は7500点を超えました。もちろん、震災復興用途であれば無料で利用できます。「これだけの写真はほかにないと思います。ぜひ使ってみてほしいですね」。そう野口カメラマンが胸を張るだけのことはあって、切り抜かれた植物はどれも開花した瞬間の、漲るような鮮やかさと美しさを湛えています(詳しくはこちら)。
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