「小峰隆夫の日本経済に明日はあるのか」

景気が良くても悪くても消費増税の影響は同じ

財政再建と経済成長を考える(上)

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2012年5月30日(水)

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 前回は経済成長の重要性について論じた。結論は「とにかく経済成長は重要です」というものだった。

 この経済成長が財政再建との関係でしばしば取り上げられるようになっている。日本の消費税の引き上げをめぐっては「消費税を引き上げると景気にマイナス(つまり成長にマイナス)ではないか」「実質2%、名目3%成長を前提にすべきだ」といった議論があるし、欧州の債務危機に際しては、フランス、ギリシャで「財政再建よりも成長重視で」という主張が支持されるようになっている。

 これまで主張してきたように、「経済成長が何より重要」ということであれば、「消費税を急ぐよりもまずは成長を」「欧州でも財政再建よりは成長重視を」という主張に賛同するのが自然に思われるかもしれないが、話はそうは簡単ではない。

 財政再建と経済成長をめぐっては、余りにも多くの論点があり、議論が錯綜しているのでやや分かりにくくなったり、世間の人々が誤解したりしている面があるように思われる。以下私が重要と思われる点を取り上げてみよう。

消費税の引き上げと財政再建の関係

 財政再建と経済成長との関係は、日本では「消費税率の引き上げを優先するか景気(成長)を優先するか」という問題として論じられることが多く、欧州債務危機との関係では、「緊縮財政か成長か」という問題として論じられることが多い。

 今回は、日本での議論を念頭に置きながら、消費税と財政再建の関係を考えてみたい。ある程度数値的な目安があった方がいいだろうから、一つの参考として、内閣府経済社会総合研究所の計量モデルによる計算結果を掲げておこう(下表)。

 この結果によると、消費税率を1%引き上げると、主に消費が減少(1年目で0.21%)することにより、実質成長率は低下し(1年目で0.15%)、物価は上昇し(ほぼ消費者物価に相当する民間消費デフレータは0.74%上昇)、財政収支は改善する(名目GDP比で0.42%ポイント)。

 いずれも常識的な結論である。消費税を引き上げると、日常生活用品も含めて、ほとんどの財貨・サービスの価格が税率分だけ上昇するので、物価が上昇する。所得は不変で物価が上がれば、家計の実質可処分所得が減少するから消費は減少し、これを主因に成長率は低下する。一方、税収が増えるので、財政バランスは改善する。

消費税率を1%ポイント引き上げた場合の経済的影響
  実質GDP(%) 消費(%) 設備投資(%) 住宅投資(%)
1年目 −0.15 −0.21 −0.08 −0.06
2年目 −0.35 −0.49 −0.32 −0.38
3年目 −0.28 −0.52 −0.71 −0.71
  名目GDP(%) 民間消費
デフレータ(%)
失業率
(%ポイント)
財政収支対
名目GDP比
(%ポイント)
1年目 0.26 0.74 0.01 0.42
2年目 −0.07 0.63 0.02 0.28
3年目 −0.15 0.48 0.01 0.28

出所:佐久間隆他「短期日本経済マクロ計量モデル(2011年版)の構造と乗数分析」(内閣府経済社会総合研究所ディスカッションペーパー 2011年1月)より

(注)消費税率を標準ケースに比べて1%ポイント引き上げ、その変化がシミュレーション期間中継続するものと想定し、標準ケースとの差を示したもの。

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