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全原発停止の中で錯綜するエネルギー政策

原発に対する日本のスタンスを明確に示すべき

2012年6月8日(金)

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 5月5日深夜、北海道電力の泊原発3号機が稼働を停止した。法に定められる定期検査を実施するためである。これで、国内の原発50基すべてが止まったことになる。

 東日本大震災の影響による福島第一原発の事故以降、脱原発を訴える声が高まっていることは言うまでもない。原発依存をゼロにするのか、縮小ながらも維持するのか。また、原発を縮小あるいはゼロにした場合の代替エネルギーを何にするべきか。我が国は、その解を出せないままに、電力の安定供給の柱の1つとしていた原発を欠き、再稼働の見通しが依然として不透明なままとなっている。

全原発停止で綱渡り状態の電力供給

 原発事故を受けて、我が国のエネルギー基本計画を白紙から見直すよう、号令をかけたのは、わたしの東京工業大学の同期である、当時の菅直人首相であった。

 エネルギー基本計画は、2010年に改訂したばかりである。この第2次改訂について検討した総合資源エネルギー調査会総合部会基本計画委員会では、わたしも委員の一人として、科学者の立場からさまざまな提言をしていた。議論を経て、この改訂では、エネルギーの安定供給やセキュリティー確保、温暖化対策、効率性の確保などの観点から、原発依存を高める計画を打ち出した。

 しかし、原発事故後、事態は一変した。心情論も含めた反原発、脱原発を唱える勢力が強まり、エネルギー政策の見直しを余儀なくされることとなった。

そして、当時の菅首相の号令を受け、聖域なしにエネルギー・環境戦略を練り直すために、国家戦略室に設けられた組織が、エネルギー・環境会議である。国家戦略担当相を議長とし、経済産業相と環境相が副議長を務め、閣僚らで構成する。各省庁にまたがる、さまざまな検証を集約し、2012年夏には同会議が、エネルギー政策の指針となる「革新的エネルギー・環境戦略」をとりまとめる予定である。

 その聖域なき検証では、まずエネルギー・環境会議の分科会として設けられたコスト等検証委員会で、原発を含む各電源のコストについて議論し、算出結果をまとめた。政府としては、算出した各電源コストをベースに、今後のエネルギー政策や技術開発に関して、国民レベルでのディスカッションを求めたいと考えたわけである。そうした意図もあり、議論の様子は、すべてネット上で動画配信された。

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「全原発停止の中で錯綜するエネルギー政策」の著者

柏木 孝夫

柏木 孝夫(かしわぎ・たかお)

東京工業大学特命教授

経産省の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会長などを歴任し国のエネルギー政策づくりに深くかかわる。総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会の分科会長、同調査会基本政策分科会の委員を務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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