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審判を待つユーロ

金本位制との3つの違い

  • サイモン・ジョンソン

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2012年6月8日(金)

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 著者のサイモン・ジョンソン氏はMITスローン経営大学院教授で、ピーターソン国際経済研究所のシニア・フェロー。IMFでチーフ・エコノミストを務めた経験を持つ。Prospect誌は、同氏を「金融危機に臨む頭脳トップ25」の1人に選んだ。経済(及び経済学)が今どこに向かっているのか、を読み解く最も影響力のある人物との定評がある。共著書にWhite House Burning: The Founding Fathers, Our National Debt, and Why it Matters to Youがある。

 ピーター・ブーン氏は、ピーターソン・インスティチュートとロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)でシニア・フェローを務める。サルート・キャピタル・マネジメント社社長。英国を拠点とする慈善団体、イフェクティブ・インターベンション――子供の健康、識字力、計算能力向上を目指す――の議長兼共同設立者でもある。現在の研究テーマは、金融危機の原因と対策。2009~10年には、LSEフューチャーファイナンスグループのメンバーも務めた。英国の研究者、政策決定者、金融関係者が集まり、将来の金融危機に対する政策を議論した。

 ユーロの創設はちょうど10年前に遡る。これは果敢で特異な実験だった。そして今、その実験の成果が大いなる疑問にさらされている――果たしてユーロは存続できるのか。欧州の人々はユーロを維持し続けるべきなのか。だが、ユーロ圏が存続すれば、加盟国にとって、そして、おそらく世界にとって多大な利益を約束するはずだ。

 ユーロは極めて“固定性”の強い通貨だ。加盟国は自国通貨を当初の交換レートでユーロと交換した後、厳重に鍵をかけて、その鍵を生い茂る草むらに放り投げた。ここにきて多くの欧州諸国が草むらをくまなく調べ、ひそかに鍵を探し出そうとしている。

 ユーロは様々な点において、かつての金本位制度と重要な共通点がある。金本位制度の下では、それぞれの国が自国通貨と金との交換レートを定めており、これによって各国通貨間の為替レートが固定されていた。

 今日、一部の人々が(しばしば声高に)、金本位制度が経済と財政を安定させていたとの見解を表明している。だが、こうした見解は歴史的な事実に完全に相反している。金本位制度の時代に、我々はバブルとその崩壊を幾度も経験した。これらのバブルとその崩壊は、政府、企業、個人、あるいはこれらの部門すべてが、過剰な借り入れをしていたことに端を発するものだった。

豊富な流動性が、債務への安易な依存を招く

 ユーロと金本位制度には3つの大きな違いがある――そのどれもが今は、ユーロを支える心強い材料とは言えない。

 第1に、金本位制度の大前提は、世界に存在する金の量は有限だということだ。現在存在する以上の金を作り出したり発見したりすることは、少なくともすぐにはできない。ユーロの場合、これとは対照的に、欧州中央銀行(ECB)が望めば、いくらでもユーロを作り出すことができる。ECBが常に現金を提供することができるため、ユーロ加盟国が流動性を失うことはあり得ない。

 政府も投資家もこのことを知っている。このため、債務の対GDP比率は、結果として、金本位制度の下で可能な水準よりもはるかに大きくなってしまう。ユーロ圏全体における、GDPに対する債務の比率は現在90%。これは、どう見ても高い水準だ。

 投資家が「さらなる救済策がすぐにも導入される」と想定し続ける限りにおいて、このような債務水準を持続することができる。しかしながら、ECBが支持を打ち切ると脅せば――例えばドイツが適切だと考える経済政策を当該政府が遵守しない場合など――すべては砂上の楼閣のように崩壊する可能性がある。

巨大な債務を抱える政府は信用できない

 第2に、現在の金融市場の規模は、金本位制度の時代よりも大きく膨らんでいる。欧州の銀行は、政府が支援してくれるという想定の下で、肥大化してきた。この両方が、今日の危機を招いた。これらの銀行の規模は、一部の国の経済規模を超えるまでに巨大化した。加えて、今やイタリアを含む欧州周辺国全体において、政府債務の質が疑問視されている。「無リスク資産」という言葉は、現代の欧州では“つじつまが合わない”表現と化している。

 欧州の銀行は膨大な債務を抱える一方、自己資本――潜在的な損失を吸収する重大な役目を果たす――が極めて少ない。どこかの国の債務が何らかの衝撃に見舞われたり、経済がさらに冷え込んだりすれば、過剰債務と過小資本に陥っている銀行システムを通じて、その影響は欧州の他の国に飛び火する。さらには、米国にまで影響が及ぶことが十分に考えられる。

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