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重要な「政策割り当て」の視点

財政再建と経済成長を考える(下)

2012年6月13日(水)

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(前回の「景気が良くても悪くても消費増税の影響は同じ」から読む

 経済成長と財政再建をめぐっては、多くの論点がある。

 例えば、欧州では財政再建よりも成長を重視すべきだという議論が強まっている。代表例は5月に行われたフランス大統領選挙である。この選挙では、成長重視を掲げるオランド氏が、財政再建路線のサルコジ氏を破り、新聞には「緊縮路線から成長重視へ」という見出しが躍った。

 日本の消費税率引き上げをめぐっても、「まずは成長戦略の実現を優先すべきだ」という成長重視の議論が出た。「実質成長率2%、名目成長率3%という政府の成長戦略目標の達成を消費税率引き上げの条件とすべきだ」という議論がその代表例だ。

 さらに、財政再建計画を作る時に、その前提としての経済成長率をどうすべきかという議論もある。当然ながら、高い経済成長率を前提とすると、財政再建はより容易になるのだが、逆にその成長率が実現できなかった場合には財政再建がとん挫するというリスクがある。

政策割り当ての議論で整理してみると

 以下ではこうした問題を「政策割り当て」という概念を使って考えてみる。「政策割り当て」というのは、要するに「どの政策目標にどの政策手段を割り振るのか」ということである。

 これについては、「ティンバーゲンの定理」という有名なフレームワークがある。ティンバーゲンはオランダ出身で、第1回のノーベル経済学賞を受賞した経済学者なのだが、そのティンバーゲンが唱えた定理は「n個の政策目標を実現するためにはn個の政策手段が必要である」というものだ。

 これは極めて分かりやすい定理だ。例えばある学生が、「テニスもうまくなりたいし、良い成績も取りたい」と考えたとしよう。この場合、政策目的が2つあるのだから、政策手段も2つ準備する必要がある。つまり、テニスの練習をすることと、しっかり勉強することという2つを行う必要があるのだ。

 これをさらに進めたものとして「マンデルの定理」がある。マンデルはカナダのノーベル経済学賞を受けた経済学者だが、そのマンデルが唱えたのが「政策手段は、それが相対的にもっとも効果を発揮する政策目標に割り当てられるべきである」という定理である。これは、「どんな政策目標にどんな政策手段を割り当てるか」という問題に「比較優位の原則」を適用したと考えればいいだろう。

 これも極めて分かりやすい定理だ。前述の例で言えば、まずテニスがうまくなるためにはどうすべきかを考えて最適の行動をし、同時に成績を良くするにはどうすればいいかを考えて、そのための最適の行動を取れということである。

 以下ではこうした「政策割り当て」の議論を踏まえて、財政と経済成長の関係を考えてみたい

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「重要な「政策割り当て」の視点」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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