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経営者に求められる「歌舞く精神」

4代目市川猿之助の口上に学ぶ、異端を受け入れる覚悟

2012年6月21日(木)

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 先日、新橋演舞場に歌舞伎を観に行った。お目当てはもちろん、「亀ちゃん」こと2代目市川亀治郎の、4代目市川猿之助の襲名披露だ。

 テレビのワイドショーなどでは先代猿之助と、その息子で俳優として活躍する香川照之が46歳での歌舞伎挑戦を報じた。縁が途切れた親子の再会は耳目をさらったが、メーンは何といっても亀治郎の猿之助襲名だ。

 襲名披露公演とあって、昼の部はチケットが取れず、夜の部のスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」を観劇した。舞台に先駆けて口上を述べる4代目。そこで自身の「歌舞(かぶ)くこと」へのこだわりを熱く語っていた。「歌舞く」とはどういうことなのか。

 歌舞伎の語源とされる「傾(かぶ)く」という言葉は、「常識外」「異様な風体」という意味がある。つまり、アウトローな存在だ。

 4代目はこれに加えて「時代を超える人」「自分が突っ走っていて、ふと後ろを見ると時代がついてきているような人」こそ、「歌舞いている」と文藝春秋(2012年7月号)の対談で語っている。

 生まれ持った血によって、その命運が定められる歌舞伎役者。そんな定めをぶち破った「歌舞き者」こそ、先代の猿之助である2代目市川猿翁だ。血筋に関係なく、力量で役者を引っ張り上げて、その者を自身が立ち上げた「スーパー歌舞伎」に抜擢した。

 見るも鮮やかな衣装に豪華なセット。中吊り(ワイヤーアクション)を使ったアクロバティックな舞台は演芸界に衝撃を与えた。と同時に、古き良き伝統を壊すという点で、歌舞伎界では異端扱いされてしまい、猿之助(当時)一座は孤立してしまう。さらに、座長の先代猿之助が2003年に脳梗塞で倒れてしまい、稀代の歌舞き者は表舞台から姿を消した。

 亀治郎(当時)は、叔父にあたる先代猿之助にスーパー歌舞伎で師事する一方、先代が倒れる前に自らの意志で一座を飛び出している。猿之助一座にいれば、その血筋から「幹部候補生」として安泰と考えてもいいのだが、彼はそれを嫌った。

 亀治郎個人としての力量を試すべく外の世界に出ることは、先代の後ろ盾もなく、異端として離れた世界に飛び込むことになる。その厳しさは想像に難くない。スーパー歌舞伎で従来の歌舞伎像を砕いた先代に対して、一門からと飛び出した亀治郎。2人の共通点は、既存の常識にとらわれない、歌舞いた存在という点だ。

 「スケジュールの都合以外で断った仕事はない」と豪語する4代目。歌舞伎だけでなく、現代劇やテレビへの出演などで引っ張りだことなり、多くの役者や現場でもまれて芸に磨きをかけていった。先代は、この姿を見て自分の名跡を継がせたいと思ったに違いない。

 異端を悪とせず、むしろ積極的に取り込むことで新たな舞台を作り上げる4代目。襲名披露公演では昼に古典歌舞伎を演じ、うって変わって夜にスーパー歌舞伎という前代未聞の構成だ。周囲は前例がないと反対したそうだが、「前例がなければ作ればいい、というのが澤瀉屋(おもだかや=猿之助一門の屋号)の精神」と周囲を説き伏せた。

 時代の先端を行くのが本来の歌舞伎であるならば、4代目を継承した猿之助こそ、真の歌舞伎役者なのだ(と個人的に考える)。

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「経営者に求められる「歌舞く精神」」の著者

白壁 達久

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者

2002年関西大学経済学部卒業後、日経BP社に入社。日経ビジネス、日経ビジネスアソシエを経て、2015年から香港支局長としてアジア全体をカバーする。2016年8月から日経ビジネス記者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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