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修正不能の大手金融「甘えの構造」

日本では証券会社の不祥事、海外では“金利操作”

2012年7月6日(金)

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 日本では、野村証券など大手証券3社において公募増資に絡む不正な情報漏洩問題が相次いで発覚したが、時を同じくして海外でも、やや形態は異なるものの同じように大手金融機関による不祥事が目立っている。

 5月には本コラムでも述べた米銀大手JPモルガンの巨額損失、そして7月にはロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作を巡って英大手銀行バークレイズが多額の罰金支払いを命じられた上に、会長とCEOが引責辞任するという事件が起きた。このLIBOR問題については、日米など大手20金融機関も当局調査の対象になっており、いずれ他の固有名詞が紙面を賑わすこともあるだろう。

 日欧米で発覚した金融問題は、それぞれ固有の背景を持つものであり、それがたまたま同一時期に明るみに出ただけという見方もあろうが、むしろ大手金融機関に潜んでいる「甘えの構造」が徐々にあぶり出されているのだ、という考え方も成り立つのではないか。それは同時に、日欧米の金融当局におけるモラルハザードへの対処方法の差異を浮き彫りにするものでもあり、将来の各国、各地域における金融業や金融システムの方向性に関して、一つの道標を与えるものだと読むこともできそうだ。

同じように「金融機関の低モラル」を示した不祥事

 日本のケースは既にメディアによって詳細に報道されているので、説明の反復は避ける。一言で言えば、増資に絡む証券引き受け部門のインサイダー情報を営業部門が取得して、貴重な顧客に「収益源」として情報提供するものだ。これが大手3社で組織的にかつ恒常的に行われていたことが、ようやく表面化したものである。「ようやく」と言ったのは、市場関係者の間では、増資情報の事前漏れは公然の秘密のように語られていたからである。

 当事者らも、それを実証することは難しいと高をくくっていたのだろう。日本には未公表情報を漏らした行為に対する処罰規定もない。そんな事情をうすうす知りながら、放置・黙認していた経営者らの責任は、厳しく問われてしかるべきである。だが日本ではインサイダーに関する厳格な懲罰体制がほとんどないに等しい。課徴金も、腐った金融マインドを修正しうるような金額ではない。

 その点で極めて対照的であったのが、バークレイズのマーカス・エイジアス会長とボブ・ダイヤモンドCEOの引責辞任であった。これはLIBORの不正操作に絡むものでインサイダー取引ではないが、「金融機関の低モラル」という意味では、似たようなものである。二人は形式的に自主的な辞任の形式を取っているが、実質的に彼らの首を取ったのは、英国の政府・中銀・金融サービス機構(FSA=日本の金融庁に相当)であった。

 公募増資の未公開情報の漏洩は、金融に疎い人でもその不正は直感的に分かるだろう。だがLIBORの不正操作というのは、金融業界にいる人でも正確に状況を把握することは難しいかもしれない。少し解説を加えておこう。

コメント6件コメント/レビュー

「金融産業の雇用シェアが3.2%を超え、金融の経済成長寄与度が6.5%を超えると、金融は有益な産業から害を及ぼす産業に変質する」というのは、まったく共感します。ニューヨークに住んでいますが、ウォールストリートの人々の報酬は並大抵ではありません。それが実態経済を助けて得られたものなら文句はありませんが、まるで賭博で儲けたようなものです。資本主義の根幹がそうなっては、2度目のリーマンショックを懸念せざるをえません。アメリカではオバマが低利住宅ローンを推進させていて、銀行もそれに応えていますが、しかし裏で聞こえてくるのは、そんな仕事は金にならない。 そういう金にならないが社会的意義のあるサービスを提供するのは厭わないが、代わりに今審議されている規制を廃案にしてもっと儲かる仕事をさせろと言うものです。半分恫喝です。「銀行業は退屈な仕事である。 いや退屈な仕事であるべきだ。」というオバマの主張には全面的に同意します。(2012/07/07)

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「修正不能の大手金融「甘えの構造」」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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「金融産業の雇用シェアが3.2%を超え、金融の経済成長寄与度が6.5%を超えると、金融は有益な産業から害を及ぼす産業に変質する」というのは、まったく共感します。ニューヨークに住んでいますが、ウォールストリートの人々の報酬は並大抵ではありません。それが実態経済を助けて得られたものなら文句はありませんが、まるで賭博で儲けたようなものです。資本主義の根幹がそうなっては、2度目のリーマンショックを懸念せざるをえません。アメリカではオバマが低利住宅ローンを推進させていて、銀行もそれに応えていますが、しかし裏で聞こえてくるのは、そんな仕事は金にならない。 そういう金にならないが社会的意義のあるサービスを提供するのは厭わないが、代わりに今審議されている規制を廃案にしてもっと儲かる仕事をさせろと言うものです。半分恫喝です。「銀行業は退屈な仕事である。 いや退屈な仕事であるべきだ。」というオバマの主張には全面的に同意します。(2012/07/07)

金融界の矛盾は「胴元が賭けている」こと■株に例をとる。株取引には投機的要素が多分に含まれている。株式益回り分を超える株価の変動は、ゼロサムゲームのギャンブルにすぎない。証券会社はそのギャンブルを取り仕切る胴元の役割も持つ。ギャンブル学の中で極めて大きな課題のひとつは「胴元の不正をいかに防ぐか」である。胴元は確率的に必ず一定の利益を得る。それ以上の不正な利益を防ぐことがギャンブルの健全な発展となるとの考えだ。翻って金融界はどうだろうか。胴元の不正を防ぐ策があまりにも疎かになっている。そもそも、証券会社が自己の判断で株取引するというのは、ギャンブルの胴元自身が賭けごとに参加しているに等しい。ダイスにどんな仕掛けをしているかを知っている胴元が、賭けに参加している状態なのだ。つまり、顧客と証券会社とでは情報収集能力に必ず差が生まれるにも関わらず、同じ土俵で勝負している。この仕組み自体が不正そのものである。■本来は全世界が協力して、証券会社は顧客の取引手数料のみを収入源とする規制を構築すべきである。しかし、現実には無理だろう。金融界は圧倒的な権力を保持しており、不正な仕組みを変えることは許さないだろう。■では一般投資家は株投資すると必ずカモになってしまうのか。いや、ゼロサムゲームを徹底して避けることで、確実な益回りを得ていけばいいのだ。具体的には、投資コストの低減の徹底と長期保有である。株の頻繁な売買はコスト増と共にカモになる機会を増大させていることになる(素人がプロに勝てるとは絶対に思ってはいけない)。また、インサイダーなどの急変に対しては、長期保有することでそれらを単なる雑音に帰すことができる。(2012/07/06)

金融業というのは、「胴元の立場」を使って思いのままに利益を作れる低リスク高リターンの素晴らしいビジネスモデルですね。自国の通貨安を利用して、高額の利益を挙げている韓国、中国、ドイツの製造業と同じ「甘えの構造」を感じます。というより、日本がなぜそれに倣わないのか不思議です。(2012/07/06)

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