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社会保障と税の一体改革で何が必要なのか

低年金者加算が暗示する消費増税無駄遣い

2012年7月18日(水)

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 「確信犯」といえば、大方は「悪いことと知りながら行う行為、犯罪」と理解しているだろうが、実はこれは誤用。本来の意味は「信念に基づいて正当な行いと確信してなされる犯罪(犯罪者)」のことだという。「悪いことと分かっていながらやってしまう」などというのは、本当は確信犯の名に値しないのである。

 実際には犯罪ではないから、そこは割り引いて読んでいただきたいが、これは「信念」に基づく行為か、それとも「悪いことと知りながら」なのか。一体どちらの“確信犯”なのだろう――。

 小沢一郎・元代表らの民主党離党→新党結成にまで発展し、政局を揺るがす社会保障と税の一体改革。参院での審議を乗り切れば、17年ぶりの消費税率引き上げが実現に向けて大きく動き出すこととなった。

 いったんは暗礁に乗り上げかけた一体改革関連法案の審議を急転、前進させたのは民主、自民、公明の3党合意だったが、その中身と民主党の動きを見れば、また新たな不安が広がってくる。消費税増税がもたらす「放漫財政」という次の懸念である。

ばらまきの問題を広げた3党合意

 3党合意を眺めて、まず不安を抱かせるのは、基礎年金の額が低い低所得者に「福祉的な給付」を行うとする一項。元々、政府案では、「年金制度の最低保障機能の強化を図る」として低年金者の基礎年金に6000円を一律加算。さらにその中で保険料の免除期間(所得が低いことなどから保険料が免除された期間)のある人は、その期間の長さを加味した一定の計算式で第2の加算もするとしていた。

 その支給対象になるのは、年金受給者のうち、その世帯全員の住民税が非課税で、対象者の年金収入とその他所得の合計額が76万8000円以下(消費税を10%に引き上げる2015年10月時点)という層だから、とにかく低年金者ほど、お金を渡し、最低保障の役割を強めようとしたのだろう。

 そこで一律加算額を6000円としたのは、単身高齢者の基礎的消費支出(7万円)と、満額受給時の基礎年金(6万4000円=特例水準解消後)との差額とされたが、民主党がかねて主張している新制度、最低保障年金の月額7万円との差とも同じ。永田町界隈では、「最低保障年金への布石」とも言われた。

 しかし、3党合意では、この第1の加算を基準額5000円とし、例えば保険料の納付期間が最大40年のうちの20年しかなければ、加算も半額になるなど納付実績に比例するように変えた(免除期間に対する第2の加算はそのまま)。

 元の政府案では、低年金加算を受けられる人と、公的年金の受給額が基礎年金満額(6万4000円)より少し多いために、加算のない人との間で受給額に逆転が起きるためだ。

 例えば、現在基礎年金満額に厚生年金が月額3000円ある人は、計6万7000円だが、こちらは加算が受けられないから受給額はそのまま。一方、基礎年金満額だけで6万4000円の人には5000円が載るから計6万9000円になって逆転してしまうといったものだ。

 見て分かる通り、会社員だった期間があり、厚生年金も受給できる自営業者や、自身で国民年金の2階部分に当たる国民年金基金に加入し、少額でも給付を受けられる自営業者など、月の年金受給額が6万4000円超7万円以下の人たちがそれに当たる。

 しかも、政府案は納付実績に関係なく、これらの加算が行われるように設計していたため、保険料をまじめに納めるインセンティブを損ないかねないとの批判が噴出したためだ。

 だが、終わってみれば、3党合意は政府案の一律加算をやめ、その額を減らしはしたものの加算自体は残すこととした。結局、年金の給付原資は膨らむ上に、納付実績と関係のない部分の加算が加わることで、年金保険料の負担と年金給付の関係が歪む結果となった。

 さらに3党合意は、前述の逆転現象を防ぐために、「一定の範囲」の人に対し、特別給付をすることにしたのである。第3ともいうべき、この加算が前述の6万4000円超7万円以下の層に限定されるのか、それともさらに上に広げるのかも定かにしておらず、ここでも一段とばらまき色を強めた。給付の増大という点では、政府案のばらまき色も強かったが、それを修正したはずの3党合意は問題を、さらに外側に広げているとさえ言える。

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「社会保障と税の一体改革で何が必要なのか」の著者

田村 賢司

田村 賢司(たむら・けんじ)

日経ビジネス主任編集委員

日経レストラン、日経ビジネス、日経ベンチャー、日経ネットトレーディングなどの編集部を経て2002年から日経ビジネス編集委員。税・財政、年金、企業財務、企業会計、マクロ経済などが専門分野。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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