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人口変動で国内の市場は縮小するのか

人口変化と経済成長(その2)

2012年8月1日(水)

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 前回、人口変動と経済成長の関係を整理してみた。その結論は、1990~2010年平均並みの生産性上昇率(正確には生産年齢一人当たり生産性上昇率)を前提とすると、一人当たりGDPは2010~30年平均で1.0%、2030~50年平均で0.9%増加し、GDP全体は、2010~30年平均0.6%、2030~50年平均で0.3%増加するということであった(3ページ目の表を参照)。こうした計算からどんなことが言えそうなのか考えてみよう。

人口変化だけで日本経済が悲惨な状況になることはない

 まず、人口変化が経済全体に及ぼす影響については、成長率に少なからぬ影響を及ぼしはするものの、人口面からの変化だけによって、日本経済が悲惨な状況に陥るということはなさそうだ。

 第1に、GDPも一人当たりGDP(所得)も増え続ける(ともに実質)。しばしば漠然とした理由で「人口減少で経済が縮んでしまう」と言う人がいるが、そんなことはない。確かに、人口減少は、成長率全体にとっても、一人当たりGDPにとってもマイナス要因として作用するのだが、生産性の上昇がそれを上回るからである。

 今回の試算結果に基づいて計算してみると、2050年のGDP規模は2010年より20%大きくなり、一人当たりGDPは46%も高くなる。まだまだ日本の経済規模は大きくなり、所得水準も高くなる可能性が高いのだ。

 第2に、今回の前提はかなり低めだということにも注意する必要がある。

 まず、今回の計算の前提とした1990から2010年という期間は「失われた20年」の期間そのものであり、日本経済が低迷していた時期である。これだけ低迷していても、平均毎年1.4%の生産性上昇率を実現することができたのだから、もう少し頑張ればもっと高めの生産性上昇率を実現できるだろう。

 また、ここで見ているのは「生産年齢一人当たりの生産性上昇率」だということにも注意が必要だ。生産年齢(15~64歳)の中には、働いていない人(学生や専業主婦)もいる。また老年人口(65歳以上)の中にも働いている人はいる。すると、女性や高齢者の労働参加率が高まると、生産年齢人口は不変でも、働く人が増えるから、結果的に「生産年齢人口一人当たりの生産性」は上昇することになる。

 要は、今回の前提は、いわば「何もしなかった場合の最低ライン」であり、われわれの努力次第で生産性をさらに高めることは可能だということである。そのための努力こそが、現在盛んに議論されている成長戦略なのである。今回の計算では、生産年齢一人当たりの生産性上昇率を1.5%としたが、こうした努力が実を結んで、生産性上昇率を2%に引き上げることができれば、2050年のGDP規模は2010年より46%大きくなり、一人当たりGDPは78%も高くなるのだ。

コメント34件コメント/レビュー

寄せられたコメントを見れば、このテーマの答えが見えてくるように思います。1. 理屈では正しいとしても、そうなるかどうかは、経済活動に参加している参加者の意思に左右される2. その参加者たちは、人口減少を言い訳に使った方が、思ったような成果が上がらないことを正当化しやすい結果、「人口減少で経済は縮小する」が定説になる。ということだと思います。経済は人の心理で動くとでも言いましょうか。(2012/08/03)

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「人口変動で国内の市場は縮小するのか」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

寄せられたコメントを見れば、このテーマの答えが見えてくるように思います。1. 理屈では正しいとしても、そうなるかどうかは、経済活動に参加している参加者の意思に左右される2. その参加者たちは、人口減少を言い訳に使った方が、思ったような成果が上がらないことを正当化しやすい結果、「人口減少で経済は縮小する」が定説になる。ということだと思います。経済は人の心理で動くとでも言いましょうか。(2012/08/03)

人口減少を悲観的に捉えたいという自虐的願望があるのか、妙な反発をしているコメントが散見される。しかし、冷静に考えれば、全くもって常識的な論述であろう。■逆のケースを考えて見ればよい。人口が増加すれば直ちに経済が成長するか?そうではない。人口増加に見合った供給が伴って初めて成長するのである。この供給が伴うということは、筆者の言うところの生産性の向上を意味する。■食糧生産が主たる産業であった時代を考えれば、むしろ、供給力≒生産性こそ、逆に人口増のネックですらあったのだ。(2012/08/03)

”人口縮小によって市場が縮小するのか”ですが、市場規模(平均単価 x 数量)というより、単純に数量が減少するのを危惧しているものと思いますがどうでしょうか? 人口減により需要(数量)が減少した結果、少ない生産数量でよくなる。少量しか製造しないので労働者は少なくて済む。最終的に失業者が増える。もちろん人口が減少しているので、失業者数も減るかもしれない。しかしながら、従来の日本は大量生産によってコストダウンしてきたがその手法が使えなくなる。また、優れた商品しか売れないので、普通の企業はどんどん倒産する。低コスト化もできず、ありふれた商品では、安い外国製品に取って代わられる。日本が製造業をやめるならともかく、継続するなら、非常に厳しい状況が待っている。--->論理がおかしなところがあるが、従来通りの経営では未来が無いと、一言で言い表していると考えますが、どうでしょう。(2012/08/02)

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