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三木谷社長強気発言の真意

なぜ故スティーブ・ジョブズ氏を引き合いに出したのか?

2012年8月16日(木)

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 楽天が7月19日に発売した電子書籍端末「コボタッチ」。発売直後にソフトウエアの不具合が見つかると同時に、初期設定する購入者が集中して不安定な状態が続くというトラブルが相次いで発生した。楽天の電子書籍チームはコボの本社があるカナダのチームと24時間体制で改修に当たり、数日内で問題を解消した。

 7月27日、楽天の三木谷浩史会長兼社長へのインタビューの機会を得た記者は、次々と飛び出す強気な発言に正直驚いた。「100点ではない。けど95点くらい」「反省すべき点がゼロとは決して言いません。しかし、問題点にスピーディに対応できたし、これは大成功だったと思います」。これをこのまま書いたら火に油を注ぐ結果になると正直思った。事実、まとめたインタビュー記事は読者の方々に対し、楽天の印象を極めて悪いものにしてしまった。

 読者の方々の反応は様々だが、多くは辛辣だった。「2000~3000人は少数と言えるのか」「メーカーでは考えられないこと」「モノを売る会社のトップが言うことではない」「事前にテストをしていればつぶせる問題だったはず」などなど。

 一つひとつの意見を読んで改めて感じたのは、日本の消費者の品質に対する要求の高さだ。もともと日本の消費者は世界でも類を見ないほど目が肥えていると言われる。海外から上陸してくるBtoCビジネスを展開する企業に取材に行くと必ず言われるのは「日本の消費者に受け入れられれば他国でも勝てる」という台詞だ。これまで高品質、安全性、耐久性といった日本製品の神話を支えてきたのは根底に“厳しい目を持つ”日本の消費者がいたからにほかならない。

 しかし今、日本企業、特にこれまでグローバルで活躍してきた製造業が世界で急速に競争力を失っている。1つの会社ならまだしも、一斉に苦況に陥っているのは、単なる一企業の経営判断ミスだけでは説明がつかない。日本の消費者が急に変わったのかと言われるとそうではない。楽天の件を見ても、依然として企業に対して厳しく品質を問う姿は健在だ。消費者のニーズは相も変わらぬまま、企業だけは凋落の一途をたどる。

「スピード」と「品質」の二律背反

 ここで改めて楽天のコボタッチを巡る日本の消費者の反応から、今、日本企業が置かれている立場について考えてみたい。

 楽天がカナダのコボの買収を発表したのは2011年11月。買収を完了したのは2012年1月。ソフトウエアの日本語化作業、出版社との交渉、「EPUB3.0」と呼ばれる世界標準のフォーマットへの変換、販売店や書店といった販売チャネル側との交渉など、数多くの作業を約半年間という短期間で進めてきた。かねて参入を噂されてきた米アマゾン・ドット・コムの動きを見ながら、とにかく急ピッチで進めてきたのは間違いないだろう。

 可能な限り販売経路を増やしたい出版社は、できるだけ多くの電子書籍ストアに対応しようとする。一方、そうなれば電子書籍端末を販売する企業は、コンテンツで差異化を図るのが難しくなる。しかも、電子書籍端末は1人で何台も持つ代物ではない。冒頭で触れたトラブル発生を加味すれば、楽天は「品質よりもスピードを優先」させたのは明らかだ。

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「三木谷社長強気発言の真意」の著者

原 隆

原 隆(はら・たかし)

日経コンピュータ記者

宮崎県出身。お酒が好きです。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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