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成長戦略の三つの重要部品は未完成

「日本再生戦略」から成長政策を考える(その2)

2012年8月29日(水)

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(「3回目の成長戦略をどう評価するか」から読む)

 前回は、7月末に決定された「日本再生戦略」の概要と特徴点を述べ、数値目標について、その実現可能性を考えてみた。今回は、成長のために政府がやるべきことは何かを確認した上で、政府はそのやるべきことをやろうとしているのかを考えてみたい。

政府が本当にやるべきこと

 マクロの成長率、需要創出、雇用創出等の数値目標は、そもそも政府の力だけで実現できるわけではないのだから、最初から相当の幅を持って考えた方が良い。また、本当に重要なのは、「政府ができることをどこまでやるか」ということだ。これが前回の結論だった。

 例えば、成長戦略の中に、「政府が今後○兆円の公共投資を行う」と書いてあったとしよう(再生戦略にはそういう数字はない。かつての経済計画や全国総合開発計画にはそういう数字があった)。これは「政府自身が行うこと」なのだから、政府が責任を持って実行すべき数値目標である。

 しかし、経済成長率、個別分野での需要・雇用創出は、基本的には民間の手で行われるものだ。したがって政府がコントロールできる力は限られている。政府がなすべきことは、「民間の経済主体(消費者や企業)」が十分に支出を伸ばし、企業活動を拡大できるような環境を整備することだ。それがグローバル化の推進であり、規制改革であり、制度的枠組みの整備である。十分な環境を整えた上で、どの程度の需要・雇用が実現するかは、やってみなければ分からない面が多く、相当に不確実である。

 同じように、私は、政府がこれからの成長分野を特定することにも懐疑的だ。今回の成長戦略では、「グリーン成長戦略」として、環境関連で50兆円以上の新規市場、140万人以上の新規雇用を見込み、普通充電器を200万基、急速充電器を5千基設置するとしている。また、「ライフ成長戦略」として、医療・介護・健康分野で50兆円の新規市場、284万人の新規雇用を見込み、医療・生活支援ロボットの開発・実用化などを進めるとしている。

 このように、政府が特定の産業分野を明示して、その分野に政策資源を集中させることは「ターゲティング・ポリシー」と呼ばれている。しかし、私の見るところ、日本でこのターゲティング・ポリシーが成功した例はほとんどない。政府は常に「これからはこんな産業が伸びる」という産業構造のビジョンを示す。多くの人も「これからどんな産業が伸びるのか知りたい」と思う。

 しかし、多くの場合、政府がこれから伸びると見込んでいる分野は、既に政府の支援なしに伸び始めている場合が多い。要するに後追いなのである。政府が民間企業以上に将来を見通す力を持っているわけではないのだから、これは当然のことだ。これからどんな分野が伸びるのか。それは、民間企業が自らのアイデアを生かして、リスクを取りながら見いだされていくものであり、現段階では誰にも分からないことなのだ。

コメント15件コメント/レビュー

かなり同感です。本稿を読んで感じたのは、『今後の政府に求めるのは失敗を恐れないチャレンジ精神』だということです。今後益々、複雑で利害が交錯した判断を政府が下していくでしょうが、例えば51%の人に利益になり、49%の人の不利益になるような判断もしなければならない時もあるでしょう。しかし、神様じゃないのだから、人間必ず失敗します。判断ミスもします。そこを速やかに修正できる制度が必要だと思います。法律を作ったら作りっぱなしで何十年も放置できるような世の中ではありません。間違っていたり、時代に合わなくなったり、修正が必要になります。日本のために、細やかかで迅速な舵取りをするためにも、失敗を前提とした制度作りを期待したいものです。くれぐれも、政府のやることは絶対間違いない。などと思わないように・・・(原発は絶対安全と同じ理論です)(2012/08/29)

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「成長戦略の三つの重要部品は未完成」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

かなり同感です。本稿を読んで感じたのは、『今後の政府に求めるのは失敗を恐れないチャレンジ精神』だということです。今後益々、複雑で利害が交錯した判断を政府が下していくでしょうが、例えば51%の人に利益になり、49%の人の不利益になるような判断もしなければならない時もあるでしょう。しかし、神様じゃないのだから、人間必ず失敗します。判断ミスもします。そこを速やかに修正できる制度が必要だと思います。法律を作ったら作りっぱなしで何十年も放置できるような世の中ではありません。間違っていたり、時代に合わなくなったり、修正が必要になります。日本のために、細やかかで迅速な舵取りをするためにも、失敗を前提とした制度作りを期待したいものです。くれぐれも、政府のやることは絶対間違いない。などと思わないように・・・(原発は絶対安全と同じ理論です)(2012/08/29)

前回「政府のできることをどこまでやるか」と提言され、今回戦略に何が欠けているかを指摘された。そもそも小峰さんの議論でいえば、政府は責任を問われたくないし、また成長の推進主体は民間なのだから、政府はベンチの人なわけです。でも、もしドラではないが、チーム=プレイヤーには裏方、監督、コーチ、マネージャ、観客=応援者、を背景に相手チームやルールetcと多彩な要素と戦うには、やはり優れたマーケティング力が必要だと思います。民間は一企業からなっているのですから、総合的視野に欠けることが多いし、この点から政府与党や各省庁との調整役だった経企庁と違う、政府の霞ヶ関エコノミストの役割はいささかも減ってはいないと思いますがいかがでしょう。ベンチの神棚の神様位にはなると思いますが。次回を楽しみにしております。(2012/08/29)

いくつか有益なコメントがあるので、補足させていただきたいと思う。小峰氏の問題点の指摘は的を得ていると思うが、分析・対応の解説では本質を十分にはついていないと思う。まず、近年の政府の成長戦略の矛盾は短期の「デフレ脱却策」が明示、実行できないまま中期の「成長戦略」を作ることにある。現状を安定化できないで、不確定要素を多く抱えたまま20年後の数値目標を掲げること自体、自然科学では「論文に値しない」代物である。(観測環境を一定に保てない中で観測結果の予測をするようなものだから)まずは、経済状況の安定化のための「離陸」政策に全力を傾注すべきである。また、再生可能エネルギーや福祉による成長戦略に疑問を呈しているのは、大いに賛成するが、小峰氏の論点では、これもまた本質をついていない。現状での再生可能エネルギーや福祉による成長戦略の問題点は、「自給自足型」(日本人のコスト負担で日本人の需要を満たす)であることである。これは財政赤字が少なく、ゼロ成長であっても潜在成長率がある程度見込まれる条件下でのみ「成功」する経済モデルであり、今の日本の経済状況はその経済モデルを今後20年間維持できる状況となっていない。(30代以下の所得低下や貯蓄額の低下、企業の統治能力や投資能力の低下など枚挙に暇ない)もっと本質的議論をしないと「ロムニーの予言」が現実のものとなる。(2012/08/29)

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