組織で働くものにとって最大の関心事は、昇進と収入でありましょう。収入をどう増やしていくのかの話は、最終回に書くつもりなので、ここでは昇進について考えてみます。
私が外資系企業に移って最初に気付いたことのひとつは、財務系のポジションの優遇のされ方でした。端的にいうとCFO(チーフ・ファイナンシャル・オフィサー:最高財務責任者)が、強大な権限を持っているのです。
CFOはお買い得なポジション?
正直に告白すると、私は、若いころにはずっと、財務や経理という仕事を下のものと見ていました。大学で微分方程式や複雑な物理現象を理論化することを学んできたものからすると、基本的に足し算と割り算で済んでしまう世界は、インテリジェンス・レベルが低く見えてしまったからです。20代のころに、「√(ルート)すらでてこないような計算なら中学生でもできるだろう」と、経理部門に配属された友人に言い放ったことがあります。今は深く反省しています。
日本の企業の場合は、営業で成果を出すことが役員や影響力の大きいポジションへの近道であることが多いです。海外との違いは、おそらく日本企業が長い間売り上げ至上主義できたことによっているのだと思います。良きにつけ悪しきにつけ、利益への執着よりはマーケットシェアが重視されてきました。
海外の企業の場合は、ちまたでもよく言われているように、売り上げそのものよりも、利益の絶対額に対する要求の方がはるかに大きいです。利益を出すことができなければ、短期で社長が代わることもよくあります。この利益偏重が、CFOの強大な権限の裏付けになっています。そういう意味では、CFOへの道に狙いを定めて、自分のキャリアを作るのは、とてもお買い得な選択肢だと思います。それは、私の独断ですが、CFOは要求されるスキルレベルに比べてリターンが大きいからです。
CFOでは社長になれない?
これほど重要なポジションでありながら、CFOのポジションは社長へのステップとしてとらえられていません。CFOから社長への例ももちろんありますが、それは少数だと思います。
それはなぜかというと、社長の多くが高いレベルの財務や経理処理の知識を習得しているからです。社長からみると、CFOはそれらの分野の実務を忠実かつ正確にこなしてくれればいいのです。それと、CFOの中には人心掌握などのスキルがあまりない人が多いのも、私の実感です。
別の言い方をすると、社長になるのであれば、CFOと同じレベルの財務・経理のスキルが必要です。海外の事例でみても、社長がアナリストからの鋭い質問にも、CFO任せではなく、自分の言葉で語っていることが多いです。
社長として財務の知識をどう使う
会社というのは不思議なもので、多くの場合、ぎりぎりのバランスの上に、成り立っています。人を増やすにしても、投資をするにしても、プラスだけではなく、必ずマイナスの側面があり(例えば経費増)、その微妙なバランスをとっていくのが社長の役目です。
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