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医薬品流通というフシギな世界

終わりが近づく「コップの中の駆け引き」

  • 飯山 辰之介

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2012年10月4日(木)

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 私たちが調剤薬局や病院でもらうクスリの値段。これは国が2年に1度、市場の実勢価格を元に決めている。この「実勢価格」が実は曲者だ。医薬品流通の関係者は一様にこう言う。「クスリの『実勢価格』が本当のところいくらなのか、実は誰も正確なところは分かっていない」。

 高齢化の影響もあって、医療費は膨れ上がっている。特に薬剤費の伸びは顕著だ。医療費の高騰を少しでも抑えたい国にとって、その抑制は焦眉の急。しかし、正確なクスリの実勢価格すら不明では、どこに薬価の「適正価格」を持ってくればいいのかすら、わからない。

 たとえば日用品や食品などでは単品単価での取引が一般的になっている。一つひとつの商品の原価や粗利がはっきりとしていなければ、きめの細かい価格戦略を立てられず、価格の変動に敏感な消費者の支持を失ってしまうからだ。一方で、クスリに関してはその単価すら正確に割り出すのが難しい。背景には、自由競争を一部制限された医療用医薬品独特の流通形態がある。

クスリ1つの値段が分からない「総価山買い」

 病院や調剤薬局が国や患者に請求するクスリの価格は国が定めており、値引きも許されない。だから病院や調剤薬局は公定の薬価と仕入れ価格との差益をできるだけ極大化させて、利益を得ようとしてきた。一方でメーカーはできる限り薬価に近い値段で医薬品卸に自分たちのクスリを売ろうとする。その間に挟まれた医薬品卸は競合他社との過当競争もあって、低収益にあえいでいる。

 このメーカー、医薬品卸、医療機関の3者は長年に渡って業界外の人々には馴染みのない独特の取引を続けてきた。象徴的なのが「総価山買い方式」や「仮納入」といった医薬品卸と医療機関の取引形態や、メーカーからのリベートに頼る医薬品卸の仕入れ習慣である。

 「総価山買い方式」とは、単品ごとに仕入れ値を決めるのではなく、医療機関が購入する全品目を薬価基準で算出した上で、「ひと山いくら」で割引率と取引価格を決めるやり方を指す。こうした慣行が広がった結果、単品ごとの正確な市場実勢価格が割り出せなくなってしまった。結果的に、一つひとつのクスリにどれほどの需要があり、どれほど患者にとって付加価値があるのかも見えなくなってしまった。

 さらにクスリの実勢価格を分かりにくくしているのが「仮納入」の慣行だ。2年に1度薬価が変わると、医薬品卸と医療機関である病院、薬局は価格交渉に臨む。ただ交渉が難航して納入価格が決まらないからといって、医薬品卸がクスリの納入を拒んでは大変なことになる。そこで価格は未妥結でも、とりあえず納入しておくような取引が続いてきた。

 その副作用として薬価改定の拠り所となる薬価調査の信頼性が損なわれる。「正確な価格を報告しようにも、価格が1年たっても決まらないこともあり、仕方なく『仮の価格』を報告したこともある」と関係者は言う。

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