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終身雇用、年功賃金がいつまでも続いている理由

日本型雇用慣行について考える(その1)

2012年10月17日(水)

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 これまで延々と成長戦略について論じてきたので、そもそもこの連載で何を議論しようとしていたのか分かりにくくなってしまった。もう一度連載の本題に戻ってみよう。この連載は、日本経済がいろいろな面で行き詰っており、問題解決の方向に向かうどころか、問題は深刻化しているという危機感から出発している。

 そのような問題意識の中で考えたのが、「今後必要な政策方向と国民が支持する政策方向が食い違っている」という問題だ。これは結構深刻である。現状を変えなければならないのだが、多くの人々は現状のままが良いと思っている。すると、政治的にはどうしても現状維持的な政策が取られやすくなる。そうこうしているうち問題はますます深刻化していく。そんな類の問題として、以下では、日本型雇用慣行の問題を取り上げてみたい。

40歳定年制の議論

 日本型雇用慣行の問題を取り上げようと思ったきっかけは、前回まで議論してきた、野田内閣の成長戦略「日本再生戦略」である。前回述べたように、この成長戦略を策定するため設けられた有識者の検討の場である「フロンティア分科会」が報告書を公表しているのだが、この分科会で出てきた政策の中で、あるものは正式に成長戦略に取り込まれ、あるものは、最終的な戦略には残らなかった。

 その途中で消えた政策の中で私が注目したのは、「40歳定年制の提言」(フロンティア分科会報告書参照)である。具体的には次のようになっている。

 「企業内人材の新陳代謝を促す柔軟な雇用ルールを整備するとともに、教育・再教育の場を充実させ、勤労者だれもがいつでも学び直しができ、人生のさまざまなライフステージや環境に応じて、ふさわしい働き場所が得られるようにする。具体的には、定年制を廃し、有期の雇用契約を通じた労働移転の円滑化をはかるとともに、企業には、社員の再教育機会の保障義務を課すといった方法が考えられる。場合によっては、40歳定年制や50歳定年制を採用する企業があらわれてもいいのではないか。…こうした雇用の流動化は、能力活用の生産性を高め(筆者注、「能力活用の生産性を高め」という意味は、私には分からない。「能力活用の場を広げることによって生産性を高め」ということなら分かる)企業の競争力を上げると同時に、高齢者を含めて個々人に働き甲斐を提供することになる」

 私はこの部分を見て大変驚いた。驚いた理由は二つある。一つは、この議論は要するに労働力の流動化を促すべきだと言っているわけであり、これは成長戦略の極めて重要なポイントであることだ。簡単に言えば、人口に占める労働力の割合が低下するという人口オーナス時代においては、限られた労働力をできるだけ有効に活用していくことが必要となる。そのためには、産業・企業を超えて労働力の再配置を行っていくことが必要となる。この時障害となるのが、終身雇用的な日本の雇用慣行だ。40歳定年制は、この硬直的な従来型の雇用慣行を打ち破る方策として提案されているのだ。私は、ポイントを突いた立派な政策が登場したのに驚いたわけだ。

 私が驚いたもう一つの理由は、この労働力の流動化、終身雇用的慣行の打破という点は、現実に行われている政策方向と全く逆だということだ。現実に行われていることは、年金給付支給年齢の引き上げと関連してむしろ定年を延長したり、パート労働者の待遇改善のために、積極的に有期雇用を無期雇用(いわゆる正社員)に切り替えようとしたりしている。要するに、労働力の流動化どころか、固定化に向かっているのだ。つまり私は、現在の政権がやろうとしていることと全く逆の政策が登場したので驚いたのである。

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「終身雇用、年功賃金がいつまでも続いている理由」の著者

小峰 隆夫

小峰 隆夫(こみね・たかお)

法政大学大学院政策創造研究科教授

日本経済研究センター理事・研究顧問。1947年生まれ。69年東京大学経済学部卒業、同年経済企画庁入庁。2003年から同大学に移り、08年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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