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突拍子もない発想は地方から

クモ糸生産に賭けるベンチャー

2012年10月25日(木)

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 クモの糸を人工的に作る──。

 こんな突拍子もない事業を始めたベンチャーがある。その名もスパイバー、スパイダー(クモ)とファイバー(糸)を合わせた造語だ。同社のウェブサイトにアクセスするとクモの写真が表示され、「日本蜘蛛学会で弊社社長が講演します」などとニュースが出ている。

 薄暗い事務所で大量のクモに囲まれ研究を続けるクモ博士。取材前、ヒーロードラマの登場人物のような姿を記者は思い描いた。

 スパイバーは山形県鶴岡市にある。庄内空港からクルマで20分ほど。途中、庄内平野の広大な田園風景が広がる。稲刈りの時期を迎え黄金色に輝く田園は、息を飲むほど美しい。

 そうした田園の中に突如としてコンクリートとガラス張り、イマドキの研究施設が現れる。2006年に整備されたばかりの鶴岡メタボロームクラスターだ。バイオ関係の企業や研究所を誘致してバイオクラスターの形成を目指す鶴岡市が建設した中核施設で、スパイバーもここにある。

 薄暗い事務所とは無縁、広々として自然光が入る開放的な研究棟だ。クモ博士という記者の予想も外れた。

 29歳の関山和秀社長はいわゆるイマドキの若者。ジーパン、ポロシャツ姿とカジュアルないでたちで会議室に現れた。

 スパイバーは人工的に生産したクモ糸を、航空機や自動車の素材として販売する。2007年に設立して5年、ようやくサンプル出荷にこぎつけた。今は自動車部品メーカーなどとの共同開発に着手していて、3年以内に量産にこぎつけたい考えだ。

伸縮性を備える炭素繊維

 クモ糸の何がすごいのか。

 関山社長は「新素材として注目の炭繊維と同等の強度に加え、高い伸縮性を備える。直径1cmのクモ糸があればジャンボ機をつるすことも可能」と語る。新作映画が話題のスパイダーマンのように自在に糸を作り出し、高層ビルから高層ビルへと飛び移ることも全くの空想ではないのだ。

 クモは様々な糸を作り出すが、命綱として使う牽引糸が最も強度が強い。防弾チョッキに使用されるアラミド繊維に匹敵する強度と、ナイロンを上回る伸縮性を兼ね備えるという。

人工合成したクモ糸を手にするスパイバーの関山和秀社長

 クモ糸の生産と聞くと、カイコから絹糸をとるように、大量のクモを飼ってそこから糸を取り出すことを思い描く。しかし、それは実際にはできないという。クモは共食いする上、桑の葉を食料とするカイコと違って、昆虫などを食べる肉食。えさを与えるのも大変だ。さらに、カイコのようにまゆを作るわけではなく、糸を集めるのも難しい。

 そこで関山社長が活用しているのが遺伝子工学だ。クモ糸の遺伝子を割り出し、その情報から人工的に再現した遺伝子を特定の微生物に組み込み、培養する。試行錯誤を繰り返し、クモ糸と同じ成分のたんぱく質を生成することに成功した。

 生成できるのは糸だけではない。「フィルムや樹脂など世の中に存在しない新たな“クモ素材”を作ることも研究中だ」(関山社長)。

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「突拍子もない発想は地方から」の著者

宇賀神 宰司

宇賀神 宰司(うがじん・さいじ)

日経ビジネス記者

日経クリック、日経ベンチャー(現・トップリーダー編集などを経て、2007年1月から日経ビジネス編集記者。流通、中小ベンチャー、マネジメント、IT(情報技術)を担当する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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