原子力行政に関する政府の方針が、なかなか明確に定まらない。そのため、新たな「エネルギー基本計画」策定に向けて議論する、経済産業省の総合資源エネルギー調査会の基本問題委員会も現在、“開店休業”状態である。
その一方で、電力システム改革の議論は、年末までに電気事業法の改正案を含めた詳細設計を固めるべく、粛々と進める方針のようだ。それに先駆けて、国家戦略室のエネルギー・環境会議の下に置かれた需給検証委員会が、10月12日に5カ月ぶりに開催された。その1週間後の10月19日には、エネルギー・環境会議も約1カ月ぶりに開かれた。
今夏のピークカットには自家発電が最も貢献
このたびの需給検証委員会では、今夏の電力需給の実績を検証し、それを基に、5月に取りまとめた今夏の電力需給見通しと、それに基づく需給対策についても検証する。そして、それらを参考にしつつ、今冬の需給見通し・対策を検討し、11月初旬までには、エネルギー・環境会議との合同会合で「今冬の需給対策」を決定する運びとなる。
電力不足が最も懸念されていた関西電力管内で、需要ピーク時の電力が最大となったのは8月3日。その値は2682万キロワットで、想定していた最大電力2987万キロワットよりも305万キロワット小さかった。これは、企業や家庭などの節電努力によるところが大きい。加えて、想定では一昨年並みの猛暑を前提としていたが、そこまでの猛暑にならなかったことも幸いした。
供給力も、想定していたのは2542万キロワットだったが、大飯原発3、4号機の再稼働による237万キロワットの上積みをはじめ、天候に恵まれたことによる水力や太陽光の供給増、他社からの融通増などにより、450万キロワット増加して2992万キロワットとなった。結果として、最大ピーク時でも10%以上の310万キロワットの余力があり、安定供給を確保できたことは喜ばしいことである。
同委員会では、代表的な企業の節電努力の事例として、住友電気工業の取り組みが紹介された。同社は今夏、関電管内15%のピークカットを目標とし、実績では最大20.9%の削減を達成した。
では、どのようにして達成したのか。その内訳が興味深い。最も貢献したのは、自社が保有するコージェネレーション(熱電併給、以下コジェネ)システムを含めた自家発電のフル稼働で、寄与率は53%にも達する。さらにレンタルの発電機も稼働させており、その寄与率14%を含めれば、自前で発電することで電力会社からの供給を減らしたことによる効果が7割近くにも及んだのである。
そのほかの寄与率は、操業シフトが15%、設備停止が13%、そして省エネは6%にすぎなかったという。世界トップクラスの省エネを進めてきた産業部門においては、家庭などの民生部門に比べて、省エネの余地はそれほど大きく残されていないことを象徴する例だと言える。
原発の全停止は化石燃料依存の時代に逆行しましょうというのと変わらない。必要とするエネルギー需要は大きく増えている分、さらに温室効果ガス排出削減は実現不可能と言っているも同然である。その結果、オゾンホールは拡大し、太陽や宇宙由来の放射線が地上に届く量が増える可能性もあるのでは?全体を捉えて議論するというならば、これらも含めた議論を期待する。(2012/10/26)