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仕組みで儲ける事業へ転換

「ものづくり」から「もの・ことづくり」へ変わろう(第3回)

2012年11月5日(月)

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 新たな日本流のものづくりの手法として、私がいくつか提案していることがあります。まずは、率先して国際標準として確立させることです。国際標準となった後は誰でもつくれるものになるので、この際には「もの」ではなく「仕組み」として国際標準化するのも有効でしょう。現在は、CSR(企業の社会的責任)ですらISO(国際標準化機構)の標準化の対象となっている時代なのです。

 次に、品質基準の見直しです。日本の製品には、過剰な品質のものが多いのです。人命にかかわる分野は除いて、不必要なまでに高い品質を作り込まず、それぞれの分野や用途にふさわしい品質に合わせるべきでしょう。

 例えば、米国では電圧の変動が激しいために、電球が頻繁に壊れます。こうした環境で使う電球ならば、寿命は短くてよく、価格は安く、常に常備しておくような製品となります。

ものは壊れる前提で、仕組みで品質を保証

 この過剰品質の話には、ほとんどの日本のものづくり企業が反発してきます。例えば、スマートグリッドの議論をする時にも、日本の電力会社は安心・安全に電力を供給し続けてきたことを強調します。停電などで電力の供給が停まる時間は、日本の1年間あたり約7分間に対して、米国は約2時間となっています、と…。

 ところが、電力料金は1キロワットあたりで見て、家庭用が米国の約8~10円に対して日本は約25円とおよそ2.5倍、産業用が米国の約7円に対して日本は15円と約2倍の差があります。どちらが良い電力なのでしょうか。もしかすると1年間に約2時間停電したとしても、約10円の電力料金の電力の方が社会全体から求められるもので、日本の安定的な供給の努力は無駄な努力なのかもしれません。しかも、こうした努力は東日本大震災に伴う原子力発電所の事故や稼働の停止によって、水泡に帰すことになりました。

 過剰品質に関しては、ものが壊れるという前提で仕組みをつくりあげる発想を受け入れにくくしているところに問題があります。開発時に部品の損傷などによる交換まで算出してコストに含むという発想が日本の企業に乏しいように感じるのは、我々の部品や製品は壊れないと意地を張って、ものが壊れることを認めない価値観があるからでしょう。

 形のあるものは壊れますし、人間が施すサービスには不完全がつきまといます。こうしたことが生じた時にカバーしていくための手法の確立に注力した方が、最適な場合が多いように感じます。

 日本国内だけで事業を展開するならば、従来の価値観だけでも通用するかもしれません。ただし、グローバルに展開しようとしたら、壊れることを前提にした仕組みを含めて、開発していかなければ通用しにくいでしょう。

 パソコンやiPod、iPhoneといった米国発の製品は頻繁に動作に不具合が出たり、電源をリセットしたりする必要にかられます。これに対して日本の同様の製品では、こうした不具合に遭遇する確率は少ないでしょう。ところが、例えばスマートフォンで人気が高いのは、日本製品ではなくiPhoneなのです。日本製品のように高品質をアピールしたところで意味をなさないことを、指摘し続ける必要があるでしょう。

 こうした仕組みを作る際、ソフトウエアとハードウエアの融合がカギを握ります。一方がトラブルを抱えても、もう一方で補う仕組みをつくりあげれば良いのです。例えば、ハードディスクや半導体メモリーは、ハードウエアとしてはエラーが多く生じるものですが、自己診断機能を入れて制御することで、利用者には分からない形でトラブルを回避する仕組みになっています。

 日本でも100%の安全性、安定性を目指すだけでなく、原発事故の教訓を生かせる今こそ、ものづくりではなく仕組みとして100%に近づける工夫に注力する発想の転換が必要でしょう。

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「仕組みで儲ける事業へ転換」の著者

田中 芳夫

田中 芳夫(たなか・よしお)

東京理科大学大学院教授

産ー官ー学での経験をもとに、これからの人たちと価値づくりを一緒に考えていきたい。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長