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旭山動物園・名誉園長が構想する「国立動物園」

金太郎飴みたいな動物園は、もういらない

2012年11月6日(火)

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 「動物園で働き始めて40年以上経ちました。社会は変わった。でも動物園は何も変わっていない。珍獣ショーで人を集められる時代は終わったんです」

 小菅正夫・旭山動物園名誉園長は拳を握る。かつて入園者数の低迷にあえいでいた「旭山動物園」を全国有数の観光スポットへと生まれ変わらせた立役者である。旭山動物園の園長を退いた小菅氏が今、心血を注いでいるのが「国立動物園」という新しい構想だ。

 小菅氏は言う。「動物園の園長が動物に詳しいと思ったら大間違い。ほとんどが自治体の職員なんです。動物園の運営手法はコンサルティング会社に任せっきり。だから全国に金太郎飴のように、同じような動物園がたくさんある」。いまの状況を打破するための新しい姿が国立動物園なのだという。

多くの動物園が入場者数の低迷にあえいでいる

 動物を見世物にすることで集客するという手法は江戸時代に始まった。花鳥茶屋や鹿茶屋、孔雀茶屋など、動物を飼う飲食店が流行した。日本で最初の動物園である上野動物園が誕生したのは1873年のことだ。

 戦後になると、動物園の開園ブームが訪れる。1950~60年ごろには毎年、新しい動物園がオープンした。1953年には1年で5園もの開園が相次いだ。戦後復興の中、動物園は数少ない貴重な娯楽施設だったので、多くの人々が度々足を運んだ。1970~80年には第2次開園ブームが起き、複数のサファリパークがオープンした。

 現在、日本動物園水族館協会には86の動物園・水族館が加盟しており、大半の動物園を自治体が所有している。身近な存在である動物園の多くは、かつての旭山と同じように入園者数の低迷に悩んでいる。ちなみに、国立の動物園は日本には存在しない。

 小菅氏と二人三脚で国立動物園構想を推し進めている、北九州市「到津(いとうづ)の森公園」の岩野俊郎園長は閉園を実際に経験した人物だ。到津の森公園は、かつて西日本鉄道が運営していたが、経営難から閉園が決まった。ところが、26万もの北九州市民の署名が寄せられたことで、北九州市が引き取って再生を果たしたのだ。

 動物園関係者は「北の旭山動物園、南の到津の森公園」と2つの動物園と、2人の園長に敬意を示す。しかも、小菅氏と岩野氏は共に獣医師であり、30年来の大親友でもある。

 岩野氏は、再生した到津の森公園を「日本1美しい動物園」にするという目標を掲げる。3月の園内にはミモザ、4月には桜が咲き乱れる。獣舎の底部にはコンクリートではなく土や落ち葉を敷き詰めるなど、随所に細かな配慮が施されている。

 旭山動物園のブレークの後、日本全国の動物園に旭山の特徴である「行動展示」が広がった。ところが岩野は「旭山動物園の真似は絶対にしない」と言い続けてきた。その理由は、「北海道の動物園を九州の動物園が真似しても意味がないから」。

 「全国どこの動物園にもゾウとライオンとキリンがいる必要が本当にあるんでしょうか。みんなが同じ事をする必要はない。役割分担する時代になったんです」と岩野氏は言う。

 隣の町に出かけることすら大変だった時代だったからこそ、自分たちの町に動物園が必要だった。でも今はどうだろう。日本全国から北海道旭川市の動物園へ繰り出す人が数百万人もいる時代になった。

 特徴のない動物園は生き残れない。だが、自治体が所有する動物園を形作っているのは、動物園のプロではない人々だ。旭山動物園の行動展示を全国各地の動物園が真似たように、彼らは常に集客力を高めるための「お手本」を求めている。こうした悪循環のなかで、全国に似たような動物園ができ、ますます客足を遠のかせている。しかも、多くの動物園が本来の役割を果たしていない。ならば、お手本になる動物園を作ろうじゃないか。それは「国立動物園」という新しい形態がふさわしい――。2人の名物園長の問題意識はここにある。

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「旭山動物園・名誉園長が構想する「国立動物園」」の著者

山根 小雪

山根 小雪(やまね・さゆき)

日経ビジネス記者

日経コミュニケーション、日経エコロジーを経て、2010年1月から日経ビジネス記者。エネルギーを中心に、自動車や素材など製造業を担当する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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