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ルミネに立ち向かった喫茶店

新宿の有名店「ベルク」を存続させたファンの力

2012年11月14日(水)

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 また1つ、大切な店が消えた。

 連絡が来たとき、街は既に夕暮れ時を迎えていた。「今日中に出て行けと言われた」。都内某所にある行きつけのビストロの主人から、そうメールが入った。メディアにもたびたび登場し、ファンも多い人気店だ。10年近くの間、競争の激しい一等地で営業を続けてきた。

 経営が赤字だったわけでも、契約違反があったわけでもない。ただ、スポンサー企業の業績が悪化し、急遽、店を閉めるよう言われたとのことだった。釈然としないまま、会食後、最終の電車でその店に向かった。店内では企業側の担当者や行きつけのファン、飲食店関係者らが渋面を作っていた。

 荷造りには数時間を費やした。店の味を支え続けた鉄鍋やミルクパンや秤を抱えて店を出たとき、時計の針は明け方の4時を回っていた。虚脱感を覚えながら各々無言でタクシーに乗り、慣れ親しんだ店を後にした。

 個人店が消えてゆく。

 「先月まであった店が、今月行ったらなくなっていた」。最近、そんな話を耳にすることが増えた。理由の1つにはもちろん、各店舗の業績の悪化がある。熾烈さを増す価格競争に、内食需要の高まり。外食業界にとって厳しい状況が続いているのは間違いない。

 だが、個人店が存亡の危機にさらされている理由はそれだけではない。たとえ繁盛店であっても、パトロンや家主の都合1つで立ち退きを迫られることがある。先々まで予約が入っていても、長年通い続けるファンがいても、「閉店」の看板を掲げざるを得なくなることがあるという現実を、私は改めて目の当たりにした。

 人生の節目でお世話になった店だった。しばらくの間、無力感に苛まれた。そんな折、大手企業と対峙しながらも営業を続ける、ある喫茶店のニュースを耳にした。

契約の見直しから一転、立ち退き要求へ

 JR新宿駅東口の改札から歩いて15秒。「ルミネエスト」地下1階に位置するセルフ型のドイツ風カフェ「ベルク」は新宿駅の名物店だ。平均で5割弱という高い食材原価率を守りながら、看板商品の「ベルク・ドック」(304円)をはじめ200種類以上のメニューで顧客を引き付ける。15坪ほどの店内では、森山大道氏をはじめ名だたる写真家の個展などを開催し、文化人のファンも多い。連日、昼夜を問わず1500人近い顧客が立ち寄り、ホットドックやドイツビールを片手に、店内に漂う「ベルク・カルチャー」に身を傾ける。

 年間売上高は1990年以降、右肩上がりを続けている。一見、個人店の中でも「勝ち組」に見えるベルク。だが、その裏では過去5年にわたり、ルミネとの間である闘争を続けてきた。なお、この件についてルミネに取材を申し入れたところ、「契約については当事者間のものであり、コメントは差し控えたい」との返答があった。以下はベルクならびに周辺取材を通じてまとめたものである。

駅ビル「ルミネエスト」地下1階にある「ベルク」。1970年に純喫茶として開業し、1990年に現在の店主である井野朋也氏がセルフ型のカフェに転換した。

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「ルミネに立ち向かった喫茶店」の著者

瀬戸 久美子

瀬戸 久美子(せと・くみこ)

日経WOMAN編集部

旧・日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、日経WOMAN、日経TRENDY、日経ビジネス編集を経て2013年4月より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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