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第17話 481万円の契約をキャンセルさせない「タオル3枚」

売りたい一心の方便と責任回避の巧妙なウソの違い

  • 弓飾 丸資

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2012年11月30日(金)

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 前回は、クローザーが“上がり込み”の末、ついに契約の調印にまでこぎつけるところまで詳述した。しかし“上がり込み”で幸いにもご契約を頂くことができたとしても、クローザーはまだ安心することはできない。彼らの頭には身震いするほど怖い「キャンセル」がちらつくからである。それをいかに克服するのかが、嬉しい契約成立後の最大の課題となる。

 既に述べた通り、訪問販売でのお客との契約では、契約後8日間はお客側が一方的に契約解除をする「クーリングオフ」の権利を持っている。例え売る側からすれば理不尽だと思える理由であっても、キャンセルには応じない訳にはいかないのだ。そこでクローザーは、常にこの怖い怖いキャンセルをいかにして防ぐか、その対策に思案を重ねるのである。

大金481万円のキャンセルを避けるタオル3枚

 まず、あのお婆さんの決断で見事契約が決った直後、お客に会社からの粗品だと言って贈り物用に包装されたバスタオルを差し出す。あのお宅にはお嬢さんが3人もおられた。「これバスタオルなんですが柄や色がお気に入るか分からないので、ご覧になって確かめて下さいませんか?」と言いながら差し出したそのバスタオルの入った箱、贈答用に丁寧に包装紙で包んであるものをその場でビリビリと破く。

 ご家族は「頂くものに色や柄など贅沢申しませんから…」と、破いて中を見せようとする様子に恐縮されるのが常だが、構わず破いて色柄を見てもらう。3人の娘さんが目と目を見合わせ笑っている。そこで私が「こりゃ3人だったら取り合いになったら困りますねぇ…」と笑いながら、横の「アポマン」に指示して車からあと2箱バスタオルを持って来させて、またビリビリとやるのである。

 「色柄の違いがあっても仲良くね」と言って3つとももらって頂く。お分かりだろうか? 別に色や柄を見せるためのビリビリではない。僅かな金額の粗品のバスタオルでも包装紙を破いておけば、例えばご家族に何らかの理由で『契約キャンセルが頭に浮かんだ場合』にも、その時一緒に返さなければならないバスタオルの包装紙を破かれてしまっていては、些細なことであっても返しづらくなる。大金481万円の契約が僅か3枚のバスタオルでキャンセル止めの役割を果たす。

足場を搬入して足場を組めばキャンセルは防げる

 さらに続けて、キャンセル止め工作を続ける。改装費を少しでも安く上げるため、現場の足場を組むための専門職人「足場屋」にはお願いしない。会社の外装職人に足場も組ませるのだ。実は、契約をいただいたその夜の内に外装職人に足場の材料を搬入させるのである。「我が社の倉庫には足場屋から預かっている足場材が偶然あります。明日になっては足場屋が持って帰ってしまう。遠い足場屋に取り行くより車の費用も安く上るので、会社にある足場を今晩の内に運んでしまいましょう」

 といかにもの理由をコジつけてでも、庭の隅に置かせていただく。あと6時間もすれば朝の7時半からは足場をすぐに組み始めるのだが、今夜から置かせていただくことで、その僅かな時間中にもご家族の気持ちにキャンセルが芽生えることを防ぎ、また少しでも契約を交わしたのだという重みを感じていただき、キャンセルを防止したいのである。

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