「田中芳夫の技術と経営の接点・視点」

日本の「ものづくり」が忘れてしまったもの ―帝人・長島会長との対談―

「ものづくり」から「もの・ことづくり」へ変わろう(第5回)

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2012年12月3日(月)

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 今回も前回に引き続き、「ものづくり」と「ことづくり」について帝人の長島徹・会長との対談によって、より深く考えていきたいと思います。

水のビジネスに見る「ことづくり」

田中:「ことづくり」の重要性に対して、日本では例えば経済産業省の所轄組織として「ものづくり」を担当する「製造産業局」はあっても、「システム局」や「ことづくり局」は存在していません。

長島:行政に関しては、インフラの輸出に対応するために、ようやくサービスまで総合的に捉える発想に変わり始めたように感じています。さまざまな技術や社会システム、サービスを融合して作り上げるインフラであり、国同士での交渉が不可欠で、一つの企業では太刀打ちできません。

長島徹・帝人会長(写真:的野弘路、以下同)

 例えば水関連のインフラには、海水を淡水に変える、工場の排水をリサイクルする、特定の産業に必要な水を生成するなど、さまざまなインフラの輸出の可能性がありますが、最も調整が難しそうなのが飲料水を生成するためのインフラでしょう。さまざまな企業の、さまざまな技術を集めて構成されている中で、各企業が相応の利益を求めるために、国としては一定のパターンを用意して対応する手法を取らざるを得ない面があるでしょう。

田中:飲料水の製造や供給のビジネスでは、仏ヴェオリア・ウォーター、仏スエズ・エンバイロメント、英テムズ・ウォーター、米GEウォーター&プロセステクノロジーなどが、ほぼ市場を独占しています。特に、ヴェオリアには「ことづくり」、仕組みづくりのうまさを感じます。

 ヴェオリアにとって、例えば日本メーカーが強みを持つ逆浸透膜は、彼らが認証できる水準にある膜であれば、どの企業のものでも構わないという状況を作り出しています。施工業者についても同様です。こうした仕組みづくりによって、全体のビジネスを自社で握ってしまうのです。

 これに対して、日本の優れた逆浸透膜のメーカーは、ヴェオリアが認証した製品を、ヴェオリアを通じて販売するビジネスです。最近になって日本の商社がこうした仕組み作りに着手していますが、まさに「ものづくり」の日本と、仕組みづくりやシステム作りなどの「ことづくり」に注力する海外企業の差が大きく出ている例だと感じます。

長島:水は、人口の増加と関係が深いビジネスです。今後も人口は増え、現在、水で困っている国や地域において、さらに水が必要になってきます。しかも、地域ごとに要求が大きく違います。例えば、井戸からくみだした、赤みを帯びている水を使っているような地域では、大掛かりな飲料水生成プラントは導入できず、地域に合わせた展開が必要になってきます。


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