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資金はなぜ「グッド・マネー」にならないのか

金融政策や銀行批判だけに偏る視点の修正を

2012年12月3日(月)

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 世界中で「マネーが動かない」という悲鳴が上がっている。金融緩和政策を進めてもなかなか成長率が上向かないのは、日本だけではない。個人消費が堅調そうに見える米国でも企業経営者の心理は冷え込んだままだ。英国は、中央銀行総裁をカナダから呼び寄せるという仰天の人事まで発表した。景気後退局面に入ったユーロ圏では、出口の気配すら見えない状況である。

 一般的に、マネーの問題は銀行など金融システムの問題だと見られている。各国の量的緩和政策の効果が薄いのは、中銀から放たれたマネーが銀行界に止まり、なかなか民間企業に届かないというのが定番の説明である。確かに主要各国の銀行が中銀に積み上げる準備預金の水準は高止まりしている。預金が増える一方の邦銀は余剰資金を国債購入に充当してきたが、その行動原理は欧米の銀行にも浸透し始めている。世界の銀行も「日本化」しているのだ。

 銀行界では預金額に対する貸出額の割合を「預貸率」と呼んでいる。慢性的に預金増・貸出減の構造が続く邦銀ではその値は70%前後と低空飛行が続いているが、実はその値が100%超で推移していた米銀も、金融危機後には急低下して現在では邦銀同様に70%程度にまで落ち込んでいるのである。

 今年の春に物議を醸したJPモルガンの巨額損失事件の背景にあったのは、この「預金と貸出のギャップ拡大」であった。邦銀はその余剰資金を主に国債購入に充てているが、JPモルガンはそれを積極的な運用に利用しようとして大失敗したのである。この預貸率の低下は、一時的な現象とは言いにくい。銀行の「運用難」は主要国共通の悩みになりつつある。

低成長下では事業再生にマネーを活用することも重要

 1990年代に邦銀が戦略で行き詰まった際に、日本の評論家やエコノミストらは「米銀のようにリスクを取って貸し出しすべきだ」と述べていたが、筆者が経験した限り、米銀も担保に基づいた融資が基本であり、闇雲に無担保融資やジャンク債投資を行う機関ではない。元本を返済せねばならない銀行に大胆なリスクテイクを求めるのは、そもそも無理な相談なのだ。

 低成長や景気低迷が長期化する際に、伝統的な銀行に多くを期待することはできない。それは日本に限ったことではなく、先進国はどこでも同じである。特に未曾有の金融危機の後とあっては、銀行を中心にしたマネーの流通拡大を期待するのは、まさに絵に描いた餅なのである。

 昨今、日本でマネーの問題と言えば「なぜ企業に資金が行き渡らないか」「成長分野にどう資金を供給するか」といった点のみに焦点が当てられるが、長期化する低成長や経済構造の転換局面では、マネーを事業再編や事業再生に有効に活用することも重要だ。

 いろいろと弱点はありながら、米国の資本システムが日本のそれよりも一歩進んでいると言わざるを得ないのは、銀行を補完するプライベート・エクイティ・ファンドなど、専門性を備えたノンバンクの存在が大きい。

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「資金はなぜ「グッド・マネー」にならないのか」の著者

倉都 康行

倉都 康行(くらつ・やすゆき)

RPテック代表

1979年東京大学経済学部卒業後、東京銀行入行。東京、香港、ロンドンに勤務。バンカース・トラスト、チェース・マンハッタン銀行のマネージングディレクターを経て2001年RPテック株式会社を設立、代表取締役。立教大学経済学部兼任講師。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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