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大田区のスナックで聞いた町工場の覚悟

東京からモノ作りが消えていいのか

  • 伊藤 正倫

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2012年12月13日(木)

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 「事業が順調にいっているからこそ、目立つといいことがないんだよ」

 先月中旬、東京都大田区のある中小企業の社長に初めて取材を申し込んだところ、むげに断られそうになった。「そうおっしゃらずに」と電話口で食い下がっていると、この社長は「明日、地元の経営者仲間との親睦会がある。オレは取材を受けないが、役に立つ話が聞けるかもしれない」と提案してくれた。想像もしなかった展開だ。

 待ち合わせ場所は蒲田駅西口。下町風情を色濃く残す、大田区きっての繁華街だ。現れた社長は、70歳前後。挨拶もそこそこに、飲み屋街へ歩いていき、年季の入ったスナックに着いた。本日は、この親睦会の貸し切りである。

 聞けば、大田区で町工場を営む経営者の有志が月1回集い、情報交換する会とのこと。この日のメンバーは8人。後で知ったのだが、“元気な中小企業”としてマスコミ等で頻繁に取り上げられる経営者もいた。会に誘ってくれた社長は「この記者、取材させろってしつこいから呼んじゃったよ」と言いながら、1人ずつ紹介してくれた。

減少に歯止めがかからない大田区の町工場

 筆者が経済誌の記者と分かると、メンバーは大田区のモノ作りの惨状を口々に話し始めた。上のグラフにあるように、かつて中小企業の集積度が日本一で、「屋上から設計図を紙飛行機にして飛ばせば、3日後には製品になって戻ってくる」といわれるほどだったが、事業所数と従業員数は凋落の一途だ。

無念さにじむ、年明けの“計画倒産”

 ある大手精密機器メーカーの下請けだった町工場の経営者によると、かつて100社近い町工場がその大手メーカーと取引があったが、今では数社という。大手メーカーが生産を海外シフトしたことも理由だが、大きかったのが部品を内製化し始めたことだった。「当初は、近く生産を打ち切る製品や新製品の部品など一部が内製化の対象だった。だが、やがて“儲かる”部品に対象が広がった」と話す。

 何とか取引を続けていた下請け仲間も、経営に窮していった。ある年末、この大手メーカーの担当部長が下請け仲間のところへ頻繁に足を運んでいた。下請け会社が年を越せずに倒産し、部品供給に支障が出ること心配したためだが、この下請け仲間は「家財を投げ打ってでもカネを確保する」といい続け、年明けの1月5日に突然倒産した。“計画倒産”だ。

 部品供給が途絶え、大手メーカーの生産はストップ。同社の部長は左遷されたという。散り際に、自らの存在価値の大きさを大手メーカーへ身をもって知らしめたかったのだろう。事の良し悪しは別として、下請けの苦しい立場に耐え続けた町工場にとって、無念さを表現する方法がほかになかったのかもしれない。

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