とにかく経営者は“感覚”を変えろ
企業がダイバーシティに向き合う場合、多様な従業員を重荷と感じて義務的に採用しているのか、それとも社会のニーズをくみ取って戦力として活用しているのかによって、その成果に大きな違いが出てくるでしょう。
いち早く活用すべきなのは、女性と障害者です。障害者の場合、ITの分野では、ハンディキャップではなく、強みになる場合があります。障害があるが故に、他の感覚が研ぎすまされ、優れたソフトウエアを作製する例があるのです。
そして、ダイバーシティに取り組むには、まず、経営者の感覚が変わらないことには始まりません。ダイバーシティやグローバル化の話題に対して、多くの場合、英語の問題が指摘されます。しかし、日本においては英語の問題よりも、経営者の発想の方が大きな問題です。もはやダイバーシティはCSR(企業の社会的責任)の問題ではなく、企業戦略の中心であるべきです。
欧州などは、ダイバーシティが進みすぎて、サッカーの試合を見ていても、英国やフランスなど、黒人の選手の比率の方が多い時もあるくらい、社会に溶け込んでいます。生まれた時から、または幼少の時から、現地の社会で暮らしている選手たちです。
これに対して日本の場合、サッカーでも、ブラジルから日本に移籍してきた選手が帰化した場合を除くと、ほぼ日本人だけで国の代表チームが構成されています。このように、日本では意図的にダイバーシティに向き合う環境を作らない限り実現できないため、経営者の意識が重要になってくるのです。
そのような中、経済同友会による経営者の行動宣言として、「2020年までに女性の取締役を実現します」「一地域の拠点における女性の比率を30%まで高めます」など、ダイバーシティに関わる内容が盛り込まれており、少しずつ変わっていくことを期待しています。
「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の導入」は世界で生きていくため、そしてグロバライゼーションのためにも必要です。しかし、その導入が実現した結果、海外の企業から日本の市場を攻められた時に、ダイバーシティのような、自社の足元で取り組むべき課題を解消していなければ、競争力の低下に歯止めがかからなくなる恐れがあります。
そして、大学の教育にも、男性主体の視点で確立されてきたという課題があります。東京理科大学で唯一、男性主体でないと感じるのは、女性の多い薬学部です。工学部など、男性の比率が大半を占めている学部との間で、人数のバランスをとる必要があるかもしれません。経営学博士(MBA)や技術経営(MOT)など、専門職向けの大学院でも同じような状況で、男性の比率が大半を占めています。
わたしは、東京理科大学のMOTのコースに女性を増やすことを模索しています。まずは、特別枠を用意してでも、数を増やしていかないと始まらないと感じています。女性に増えてほしい理由は、もちろん多様性の確保です。例えば、女性の視点が入ると、研究会における議論の質が変わってくるのです。さらに、できれば、障害者の方にも参加してもらいたいと思っています。
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